盲目の理髪師(ディクスン・カー)のあらすじと感想(ネタバレ)|船上の笑劇ミステリー

盲目の理髪師(ディクスン・カー)のあらすじと感想(ネタバレ)|船上の笑劇ミステリー

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「盲目の理髪師」/ディクスン・カー(フェル博士シリーズ4)

「盲目の理髪師」は、著者のディクスン・カーが書いたミステリー小説です。

こちらの作品は「ギディオン・フェル博士シリーズ」という名探偵のミステリーシリーズの4巻目です。

ホラーテイストが多いカーには珍しく、ユーモアがふんだんに盛り込まれた笑劇(しょうげき)となっています。
私も読んでて思わず声に出して笑ってしまったほど、愉快な作品でした(事件は愉快ではないです)

今回は「盲目の理髪師」について感想を語っていきます!



フェル博士シリーズ(ディクスン・カー)の読む順番

ディクスン・カー作品の読む順番や、ギディオン・フェル博士シリーズの読む順番については以下の記事でご紹介しています。ご興味あればぜひチェックしてみてください!


ギデオン・フェル博士シリーズ(ディクスン・カー)の読む順番一覧|全25巻完結済み
ギデオン・フェル博士シリーズ(ディクスン・カー)の読む順番一覧|全25巻完結済み

「盲目の理髪師」あらすじ

あらすじ

大西洋をイギリスに向かう豪華客船クイーン・ヴィクトリア号のなかでふたつの重大な盗難事件が、さらには奇怪な殺人事件が発生する。

なくなったはずのエメラルドがいつの間にか持ち主の手にもどったり、死体が消えたあとに〈盲目の理髪師〉が柄に描かれた、血まみれの剃刀が残っていたり。

すれ違いと酔っ払いのどんちゃん騒ぎに織り込まれる、不気味なサスペンスと意表を突くトリック。フェル博士が安楽椅子探偵を務める名長編!

今回はシリーズ3巻目「剣の八」で登場した、推理小説家のモーガンが巻き込まれた船上での事件です。

モーガンが好きな方には非常に嬉しいと思いますが、今回の主役はウォーレンという金持ちボンボンの息子です。
彼が非常に面白い役割になっていまして、今作では一番の目玉といっても過言ではありません。

豪華客船クィーン・ヴィクトリア号に乗っていたモーガンは、数人の仲間と出会います。(ウォーレン、ペギー、キャプテン)
そこでドタバタ騒ぎに巻き込まれ、挙句の果てに女性の死体を発見してしまいます。

しかし、みんなが目を離した隙に女性の死体は消えてしまいます。
船内をいくら探しても死体は見つかりません。
果たしてあれは現実の出来事だったのでしょうか?

登場人物一覧

※こちらは主要人物だけ載せています。

ヘンリー(ハンク)・モーガン
推理小説作家。冷静沈着…?

カーティス(カート)・ウォーレン
外交官。台風の目みたいな男。

サディアス・G・ウォーパス
ウォーレンの伯父。政治家。台風の目…

フォータンブラ(ジュール伯父)
あやつり人形師。酒飲み。

トマッセン・ヴァルヴィック(通称キャプテン)
元船長。豪快。

ペギー・グレン
フォータンブラの姪。若くて美人。

ヘクター・ホィッスラー
クィーン・ヴィクトリア号船長。嫌な奴。

オリヴァ・ハリスン・カイル博士
精神科医。

スタートン子爵
エメラルドの象の持ち主。

チャールズ・ウッドコック
殺虫剤のセールスマン。

レスリー・ペリゴール
美学者。

シンシア・ペリゴール
レスリーの妻。

ギデオン・フェル博士
探偵。



「盲目の理髪師」を読んだ感想(ネタバレあり)

今作はめちゃくちゃ笑えるミステリー小説でした。
特にフォータンブラ(ペギーの叔父)が酔っ払って、海に物を投げているシーンなどずっと笑ってました。あまりにも面白くて。

作中ではいくつかの騒動が起きていて、せっかくなので順番に語っていきます。ミステリーのはずなのにミステリーの感想より、キャラクターの感想になっています。
いやーツッコミどころ満載で笑っちゃいますよこれ。

騒動①ウォーレンの伯父がやらかした

まず初めにウォーレンの伯父や政治家たちが、今の政治について外聞を気にせずに喋ったものを録画した2つのフィルムのうち1つが盗難に遭います。(持ち主ウォーレン)

もしこれがジャーナリストなどの手に渡ったら、世界は荒れるほどの内容だそうです。大体なんでそれを録画したんだ…脇が甘すぎです。

しかし、そのフィルムの内容を知っているのは限られた人間しかいないはずでした。なので盗人は、フィルムの内容を知っている人になります。
盗人は必ず残りのフィルムを取りにくるはずだという仮説で、ウォーレンたちは部屋で待ち構えていました。

騒動②今度はウォーレンがやらかした

ウォーレンたちが部屋で待ち構えていたら、ドアの外でウォーレンの名前を呼ぶ女性がおり、見つけた時にはもう瀕死の状態でした。

彼女を介抱していましたが、盗人らしき人がウォーレンの船室から出てきたためタックルしたら、それはホィッスラー船長でした。
船長とはいざ知らずウォーレンは殴りまくっていましたが、船長のそばにはエメラルドで出来た象のペンダントがありました。(これがウォーレンのやらかし2つ目。)
このペンダントはスタートン子爵からの預かりもので、万が一紛失した場合は莫大な損害賠償金を支払わなければなりません。

ウォーレンたちはパニックになりましたが、盗難の疑いから逃れるためにペギーが近くの船室へ投げ込みました。

騒動が終わった後に自室に戻りましたが、そこには女の死体が消えていました。

騒動③ウォーレン脱走

話はとんで、ホィッスラー船長がウォーレンの数々の言動から盗難を疑いすぎて留置所に入れます。(その前にもウォーレンは船長に殺虫剤をぶっかけています。やばい男です。)

しかし彼は諦めませんでした。フィルム盗人を見つけてフィルムを取り替えすまでは。
セールスマンのウッドコックを呼びつけ、昏倒させて脱出しました。

その後、盗人の疑いがあったカイル博士の部屋に忍びこみ、書類と何故かエメラルドを手にモーガンたちのところに戻ってきました。
さすが台風のような男。この場面は「どうしてそうなる!!」と読者のツッコミが目に浮かぶようです。

しかし、この時点で意味がわからなかったのは「なぜカイル博士のところにエメラルドがあったのか?」という点です。
そのシーンの前にスタートン子爵がエメラルドを発見していたのをモーガンは目撃していました。
ということはエメラルドは2つあったということになります。

騒動④フォータンブラ(ペギーの叔父)がやらかす

フォータンブラはアルコール中毒です。
ペギーは人形劇の本番があるので、叔父に飲ませようとしなかったのですが彼は酔っ払うほど飲んでしまいます。

そして彼には良くない酔い癖があって、それが手当たり次第に周りのものを取って誰かに配る癖です。

本当に叔父さんの酔っ払うシーンには爆笑したくらいなんですが、手当たり次第にみんな配っていきます。

そしてウォーレンがカイル博士から盗んできたエメラルドや金の腕時計なども全部配ります。
配ると言いながら海に投げ捨てるもんですから、めちゃくちゃ笑いました。

最後にミステリーについて

ミステリーとしては、犯人は意外な人物で盲点を突かれた感じでした。

今回事件は3つあって、①フィルム盗難事件、②エメラルド象のペンダント盗難事件、③女性殺人事件です。
キーポイントは③女性殺人事件は、一体どういう動機で殺されたのか?という点です。

おそらく語り手であるモーガンが事件の騒ぎの中にいたので、客観的な視点で事件を俯瞰できず、ヒントも見逃す効果があったのかなと思います。
というかドタバタ劇の中に隠されているので見つけるほうが難しいというかなんというか…

しかし途中でフェル博士が提示する「16の手がかり」など面白い要素があって、きちんと伏線を回収していたのでやはりカーはすごいです。

ただ盲目の理髪師が彫ってある剃刀についてはよくわからなかったなあ…



まとめ

この作品は読者の中でも意見が別れる作品のようです。
個人的には結構好きなテイストだったので、非常に満足です。感想を書きながら思い出し笑いしたほどです。

ミステリー小説をメインとして読みたい方にとっては、ちょっと不完全燃焼になるかもしれません。

気になる方はぜひ読んで欲しい一作です。