雲なす証言(ドロシー・L・セイヤーズ)のあらすじと感想|シリーズ2作目

雲なす証言(ドロシー・L・セイヤーズ)のあらすじと感想|シリーズ2作目

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「雲なす証言」(ドロシー・L・セイヤーズ)とは

「雲なす証言」とは著者のドロシー・L・セイヤーズが1926年に出版した、ピーター卿シリーズの2巻目です。
今作はフーダニット(Who do it?)がテーマで、誰が被害者を殺したのかを考えながら読むと面白いです。

今回は「雲なす証言」について感想を語っていきます。

ピーター卿シリーズについて

ピーター卿シリーズの読む順番については、以下でご紹介しています。ご興味ある方はぜひご覧ください!


ピーター卿シリーズ(ドロシー・L・セイヤーズ)の読む順番をご紹介!
ピーター卿シリーズ(ドロシー・L・セイヤーズ)の読む順番一覧|貴族探偵の華麗なる謎解き



「雲なす証言」のあらすじと登場人物

あらすじ
兄のジェラルドが殺人犯!?

しかも、被害者は妹メアリの婚約者だという。
お家の大事にピーター卿は悲劇の舞台へと駆けつけたが、待っていたのは、家族の証言すら信じられない雲を掴むような事件の状況だった……!

兄の無実を証明すべく東奔西走するピーター卿の名推理と、思いがけない冒険の数々。活気に満ちた物語が展開する第二長編。

まさかのピーター卿の兄が殺人犯として、裁判にかけられる事件から物語はスタートします。
シリーズ2巻目なので、ピーター卿の兄がどういう人物かは読者はよく知らずに物語は進んでいくのですが、兄ジェラルドは裁判にかけられても一向に事件の詳細を語りません。しかも自分を弁護する弁護士にさえも話しません。

兄がやったわけではないと確信しているピーター卿は、頑固な兄に困りながら事件を調査をしていきます。

今回はピーター卿の家族が勢揃いするので、バタバタとした家族劇に近い感じで面白い作品となっています。

登場人物

ピーター・ウィムジイ卿:貴族探偵

マーヴィン・パンター:ピーター卿の従僕

ジェラルド・ウィムジイ:ピーター卿の兄。デンヴァー公爵

レディ・メアリ・ウィムジイ:ピーターの妹

デンヴァー先代公妃:ピーターの母

ヘレン・ウィムジイ:ジェラルドの妻。当代デンヴァー公妃

フレデリック・アーバスノット:ピーターの友人

デニス・キャスカート大尉:レディ・メアリの婚約者

リディア・キャスカート:デニスの叔母

マーチバンクス大佐夫妻:リドルズデール荘の客

ペティグルー=ロビンソン夫妻:リドルズデール荘の客

ジョン・ハードロー:森番

グライムソープ夫妻:農場主

ゴイルズ:社会主義者

マーブルズ:事務弁護士

サー・インピィ・ビッグズ:勅撰弁護士

チャールズ・パーカー:スコットランド・ヤードの警部



「雲なす証言」の感想(ネタバレあり)

今作はミステリというよりも、コメディ劇のような作風でかなり面白かったです!
ミステリ的には、そういうオチか・・・という感じで少々面食らいましたが、入り組んだ人間模様が非常に見どころだと思います。
(ミステリーについてはノーコメントです)

いつもながら、ピーター卿がピエロのように陽気に事件を調査するところが、コメディな作風に貢献しています。
ピーター卿に対しての兄妹や母親の態度から伺えるに、ある意味一族の中での厄介者に位置している人物だと見られます。
ただ読み終わった後の感想として、ピーター卿が一番まともな人物なんじゃないかと思えました。最後の酔っぱらいシーンは必見です。

兄ジェラルドと妹のメアリ

ピーター卿より阿呆なんじゃないかなと思う人物が二人いました。
ジェラルドは最後まで貝のように口を閉じ、ひたすら事件解決に貢献しなかったのですが、その態度の理由がしょうもなかったのが非常に残念でした。
というか当代デンヴァー公妃はどう思うんだろう・・・というのが本当のところです。
夜中に抜け出すなんて気づかないはずがないだろうし、最後の相手の女性のオチもしょうもなかったです。

妹のメアリも、兄が殺人容疑で逮捕されているというのに、この人も貝のように黙ったままで何やってるんだろうと思ったのが本音です。
メアリの好きな人も自分の兄であるピーター卿を撃った時点でやばいというのに、まだ庇っていたりしたので恋は盲目なんて洒落になりません。

そんな家族の中でも、ピーター卿は最後まで兄のために冤罪を晴らそうと、重要人物を探しに行き、重要な証拠を見つけて見事に謎を解いた彼はヒーローです。ますます気に入りました。

グライムソープ夫妻

この夫がめっちゃ怖かったです・・・!DVすぎて妻がちょっと何かしただけでも浮気やらを疑い暴力を振るう姿は、畜生レベルの男でした。
最後も事故で亡くなるのはなんとも皮肉で、胸がスッとしました。
でもジェラルドは一体どこで出会ったのでしょう。あの人結婚してるし貴族なのに農民に手を出すなんて、いろんな意味ですごかったです。



まとめ

今作はミステリというより、コメディ作品として楽しめる作品でした。
ピーター卿は良いやつだなと思うと共に、著者のセイヤーズ作品の面白さを改めて実感しました。
当時はちょうど戦争中でしょうし、こういう作風だとかなり人気だったのではないでしょうか。

ちなみにあとがきによると、「雲なす証言」の執筆中、男の子を出産しているようです。妊娠しながら書くとは恐れ入ります。
次の作品も期待大です!