不自然な死(ドロシー・L・セイヤーズ)のあらすじと感想|ハウダニットの名作

不自然な死(ドロシー・L・セイヤーズ)のあらすじと感想|ハウダニットの名作

「不自然な死」(ドロシー・L・セイヤーズ)とは

「不自然な死」とは著者のドロシー・L・セイヤーズが1927年に出版した、ピーター卿シリーズの3巻目です。
今作はハウダニット(How do it?)をテーマとしていて、犯人や動機は序盤から気づくように提示されています。

今回は「不自然な死」について感想を語っていきます。

ピーター卿シリーズについて

ピーター卿シリーズの読む順番については、以下でご紹介しています。ご興味ある方はぜひご覧ください!

ピーター卿シリーズ(ドロシー・L・セイヤーズ)の読む順番をご紹介! ピーター卿シリーズ(ドロシー・L・セイヤーズ)の読む順番をご紹介!

「不自然な死」のあらすじと登場人物

あらすじ
殺人の疑いのある死に出会ったらどうするか。
とある料理屋でピーター卿が話し合っていると、突然医者だという男が口をはさんできた。

彼は以前、癌患者が思わぬ早さで死亡したおりに検視解剖を要求したが、徹底的な分析にもかかわらず殺人の痕跡はついに発見されなかったのだという。奸智に長けた殺人者を貴族探偵が追いつめる第三長編!

始まりは、ピーター卿と警部のパーカーがレストランで食事をしていた時、そこで出会った医者カーから興味深い話を聞きます。
なんでも一人の金持ち老婦人アガサ・ドーソンが不自然な死を遂げたという事件で、結局は自然死として片付けられましたが、医者のカーは一人疑いを持っていました。

カーの話を興味深く聞いたピーター卿は、実際に調査を始めます。
今回は初登場の、ピーター卿の助手クリンプスン嬢を故アダム・ドーソンの姪のところに潜入調査にやり、被害者の関係者を調べさせます。

物語の中ではピーター卿とクリンプスン嬢の視点が入り混じり、かなり面白い構成になっているのでそこも今作の注目箇所です!

登場人物

ピーター・ウィムジイ卿:貴族探偵

マーヴィン・パンター:ピーター卿の従僕

チャールズ・パーカー:スコットランド・ヤードの警部

J・マーブルズ:事務弁護士

アレグザンドラ・キャサリン・クリンプスン:ピーター卿の聞き込み代理人

アガサ・ドーソン:金持ちの老婦人

メアリ・ホイッテカー:ドーソンの姪

ハレルヤ・ドーソン:アガサの従弟

エドワード・カー:アガサの元主治医

フィリター:看護婦

フォーブス:看護婦

バーサ&イヴリン・ゴートゥーベッド:ドーソン家の元女中。姉妹

バッジ夫人:絶景荘の主人

ヴェーラ・フィンドレイター:メアリの友人

フォレスト夫人:有閑マダム

ベン・コブリング:馬丁

トマス・プロービン:弁護士

トリッグ:弁護士

「不自然な死」の感想(ネタバレあり)

前作の「雲なす証言」と同じくらい面白い作品でした!
先程も言いましたが、今回はハウダニットとして「老女の不自然な死」についてが一番の謎でした。

つまり、「一体どうやって、老女の死を自然死に見せかけたのか?」という謎です。
これは最後らへんにピーター卿が謎を解くのですが、ぶっちゃけ一般人は解けません。専門知識を持っていないと・・・
また、あとがきの最後にも書いてありましたが実効面では微妙だそうです。

ただ、それを抜きにしても物語と展開はとても面白かったので、一読する価値あります。
以下気になった点です。

犯人の動機について

今回は「犯人」と「犯行動機」を読者にわかるように書いてありましたが、犯行動機となる遺産相続の話が非常に面白かったです。(もう犯人言っちゃってるようなものですが、あえて書きません。)
どうやら物語の時間軸の中で、法改正前と法改正後で遺産相続できる「対象」が変わったことを犯人は知ったようです。

弁護士のトリッグが犯人に質問されて相談にのったようで、その後別の人物からの依頼で遺言書を作ります。
この話が今作の中で非常に面白く、トリッグの話から犯人の素顔や性格などが表されていて、犯人像がかなり明確になっていって展開的にはばっちりでした。

いつもながら犯人視点はないのですが、事件を通して浮かび上がる犯人の姿が非常に冷徹で頭のいい人物でした。
ピーター卿やパーカーも一目を置いたほど、途中の余計な殺人がなければ証拠が見つからず、完全犯罪だったのではと言っています。
一番驚いたのは犯人の身代わりです。頭いいなと思ったのですが、実際そんなに気づかないものかな、とも思いました。

ピーター卿の苦悩

ピーター卿が初めて?自分の好奇心に後悔している場面がありました。
神父様に告解をしている場面なんですが、「自分が事件に首を突っ込まなければ犠牲者は出なかった」、と物語の中で言っています。

かのエラリー・クイーンなどの探偵も必ず同じ悩みを抱えていたので、探偵ゆえの苦悩なんだなと思いました。
こういう人間らしい部分を描かれると、キャラクターに生命が吹き込まれていくような感じがして、個人的にはとても良いです。

また、今回は珍しくクリンプスン嬢という別の人間を使って、事件を調査します。
ピーター卿は他の探偵と違って、貴族ゆえにあまり自分の足を使わないのが特徴です。

クリンプスン嬢は面白いキャラクターでとても良かったのですが、最後の犯人と知らずに果敢に乗り込んでいくところは見ていてハラハラしました。
ピーター卿たちも乗り込むのが一足遅かったら、確実に彼女もやられていたことでしょう。

果たして次作も負けずに出てくれるのか、期待どころです。

まとめ

そういえば最初に登場した医者のカーですが、結局ダメ男だったのが笑いました。
最初に登場して以来、全く事件に登場してこなかったキャラクターでしたが、看護婦との婚約を蹴って遺産が入ったから別のクラスの人間と付き合う、みたいなことが書いてあり、一番しょうもなかったです。がっかり。

というしょうもないオチがありましたが、総じて物語が非常に面白かった巻でした。
今のところシリーズの中では1番に面白かったのですが、果たして他の作品はそれを上回ってくれるのか期待したいところです。