「自由研究には向かない殺人」(ホリー・ジャクソン)とは
「自由研究には向かない殺人」とは、著者のホリー・ジャクソンが執筆した、YAの翻訳ミステリー小説です。
YAとはヤングアダルトの略で、本作は子供も大人も楽しめる作品となっています。
ちなみに日本でもかなり人気で、「〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい!海外篇」で第一位を獲得、「2022年本屋大賞 翻訳小説部門」では第二位を獲得したほど有名となっています。
シリーズとしては全三部の1作目だそうなので、2作目も楽しみです。
今回は「自由研究には向かない殺人」について感想を語っていきたいと思います!
「自由研究には向かない殺人」シリーズ
こちらのシリーズの読む順番については以下でご紹介しています。興味ある方はぜひご覧ください。
自由研究には向かない殺人シリーズ(ホリー・ジャクソン)の読む順番一覧|全4部作完結済み
「自由研究には向かない殺人」のあらすじと登場人物
あらすじ
イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して”自由研究で得られる資格(EPQ)”に取り組んでいた。題材は5年前の少女失踪事件。交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自殺したと発表した。
少年と親交があったピップは彼の無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に真相を探る。調査と推理で次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。
ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリ!
簡単に紹介すると、主人公の女子高校生ピップが自由研究のテーマとして、物語の舞台リトル・キルトンでの少女失踪事件を取り上げます。
失踪した少女はアンディ・ベル。当時17歳で、自宅からパーティーに出かけたっきり行方不明となりました。最後に彼女を見たのは22:40ごろでした。
失踪から4日後の火曜日、アンディのボーイフレンドだったサリル・シンが森で自殺しているのが発見されました。
父親の携帯にアンディを殺したのはサリルだというショートメッセージを残して。
そのメールをきっかけに裁判と世間上では、アンディを殺したのはサリルだ、ということが決定されてしました。
ピップは元々サリル・シンの友達で、彼が優しいお兄さんだったのをよく覚えていました。そんな彼の無実を照明するためにピップは調査を始めます。
調査をする中でピップはかなり真相に近づくのですが、時々危機一髪的な危ない目にも遭います。
読んでいて非常にハラハラドキドキしますが、それがこの作品の魅力の一つでもあります。
登場人物
・ピッパ(ピップ)・フィッツ=アモービ:リトル・キルトン・グラマースクールの最上級生。17歳
・ヴィクター:ピップの父。弁護士
・リアン:ピップの母。不動産会社勤務
・ジョシュア:ピップの弟
・アンドレア(アンディ)・ベル:5年前に失踪した少女
・ジェイソン・ベル:アンディの父
・ドーン・ベル:アンディの母
・ベッカ・ベル:アンディの妹。キルトン・メールのインターン
・サリル(サル)・シン:アンディのボーイフレンド。故人
・ラヴィ・シン:サルの弟
・マックス・ヘイスティングス:サルの同級生
・ナオミ・ワード:サルの同級生
・ジェイク・ローレンス:サルの同級生
・ミリー・シンプソン:サルの同級生
・カーラ・ワード:ピップの親友。ナオミの妹
・エリオット・ワード:ナオミとカーラの父。リトル・キルトン・グラマースクールの教師
・ローレン:ピップの親友
・スタンリー・フォーブス:キルトン・メールの記者
・クロエ・バーチ:アンディの親友
・エマ・ハットン:アンディの親友
・ナタリー・ダ・シルヴァ:アンディの同級生
・ダニエル・ダ・シルヴァ:ナタリーの兄。テムズバレー警察の巡査
・ジェス・ウォーカー:ベッカ・ベルの友人
・ハウィー・ボワーズ:ドラッグの売人
「自由研究には向かない殺人」の感想・考察(少しネタバレあり)
YAだからか、非常に読みやすい上に面白くてとても満足いく出来でした!
事件としては、翻訳ものあるあるでどこか既視感を覚える話ですが、物語の構成がとても良くできていてかなり完成度高い作品でした。
ミステリーとしてはもちろん突っ込みたいところはいくつかありましたが、読書初心者やミステリー初心者にはかなりおすすめしたいほどの読みやすさ&面白さです。
特に良かったところとして、以下があげられます。
・物語として読み応え抜群!
・ピッパとラヴィの関係
・時折挿絵が入っていて整理しやすい
物語として読み応え抜群!
最後まで読者を飽きさせない物語展開で、とても面白い作品でした。近年だと王道ですが、久しぶりに良質な作品でした。
特に作中でビッパが、今時のテクノロジーを使って独自に調査をしていたのが印象的でした。
例えばフェイスブックを使ってアンディの友達に探りをいれたり、スマホの探知機能を使って犯人の居場所を特定したり、クラウドに調査資料を隠したりなど。
かのホームズだったらびっくりするであろう調査法で、現代らしく、読んでいてとても楽しかったです。(ホームズだったら身体張って馬車にしがみついたりしそうです。スマホ便利。)
しかし17歳にしては頭が鋭すぎてちょっと笑ってしまいました。
周辺人物の調査していく過程が、警察顔負けの高レベルなことをやっていたのですごかったです。
反対に物足りないなと思ったところは、人物背景が少し足りないなと感じたので、次作はもう少しキャラクターを掘り下げてくれたらいいなと思ってます。
ピッパとラヴィの相棒関係
この作品で一番良かったのが、主人公ピッパとサルの弟ラヴィの二人がタッグを組んで事件を調査するのがとても面白かったです!
そもそもピッパがアンディ事件の聞き取り調査を最初にしようと思ったのがラヴィで、とてもびっくりしました。普通一番の被害者を先に調査するか・・・?と思わず笑ってしまうほど、ピッパの思い切りがよかったです。
実はリトル・キルトンでは、サルがアンディを殺したとされているので、残されたラヴィ一家は住人から避けられていました。
一番酷かったのは、ラヴィがスーパーでレジのおばちゃんに酷い態度をとられていた時です。
ラヴィの肌はオーク色って表現されていたので、もしかしたら人種差別の意味も含まれているかもしれませんが、読んでいて非常にやるせなかったです。
でもラヴィとしては自分の兄(サル)が本当にアンディを殺したとは考えておらず、むしろ兄の名誉を取り戻そうと自分で一度調査を始めていたようでした。
その想いを組んでくれた救世主がピッパだったので、今回の冒頭はとても良い出会いだったんじゃないかなと思います。
最終的には二人がくっついていたので心がほわっとなりました。ピッパが一目ぼれだったなんて可愛いな~
物語の途中で資料が載っててわかりやすい!
今回の作品は珍しく、ピッパの調査資料が合間に絵が挿し込まれていて、読者に対してわかりやすくなっています。
例えばアンディの手帳や、ピッパが聞き取り調査してきたメモなどが掲載されていて、読んでて整理しやすくってとても良かったです。
ただアンディが通った地図については一番最初に挿し込んでほしかったな~と個人的に思いました。読み返したいのに何ページに掲載されてたのかわからなかった…(p.54)
まとめ
近年稀に見る良質ミステリーでした。
翻訳ものが面白いのって、総じて物語展開がダイナミクスで面白いんですよね。
2,3段階ほど予期せぬ展開が待ち受けていたりするので、読者にとっては読み応え抜群です。
- 自由研究には向かない殺人
- 優等生は探偵に向かない
- 卒業生には向かない真実
自由研究には向かない殺人シリーズの感想一覧