早川文庫(kindle)が50%オフ中!11/7まで

卒業生には向かない真実(ホリージャクソン)のあらすじと感想|ピップの行動は正義と呼べるのか?

卒業生には向かない真実(ホリージャクソン)のあらすじと感想|ピップの行動は正義と呼べるのか?

本・マンガのおトク情報
本をおトクに読みたい方は、Amazonの「Kindle Unlimited」という本読み放題サービスがおすすめです。
1ヶ月無料なので、まずはお試しで使ってみてください。(個人的にめちゃおすすめです)
角川作品をよく読むならBOOK☆WALKER」の本読み放題サービスがおすすめです!
角川文庫が全て読み放題なので、ぜひチェックしてみてください!

「卒業生には向かない真実」(ホリー・ジャクソン)とは

「卒業生には向かない真実」とは、著者のホリー・ジャクソンが執筆した、「自由研究には向かない殺人」シリーズの3作目になります。
今回でこのシリーズは完結となります。今まで読んできたはぜひ、最後まで読んで、考えていただきたい作品になっています。

今回は「卒業生には向かない真実」について感想を語っていきたいと思います!

「自由研究には向かない殺人」シリーズ

こちらのシリーズの読む順番については以下でご紹介しています。興味ある方はぜひご覧ください。

自由研究には向かない殺人シリーズ(ホリー・ジャクソン)の読む順番一覧|全4部作完結済み
自由研究には向かない殺人シリーズ(ホリー・ジャクソン)の読む順番一覧|全4部作完結済み




「卒業生には向かない真実」のあらすじと登場人物

あらすじ
わたしはこの真実から、決して目を背けない。
『自由研究には向かない殺人』から始まった
ミステリ史上最も衝撃的な3部作完結編!

大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話に匿名のメール。
首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。

調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。
犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ているのはなぜなのか。

ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!

前回の事件(「優等生は探偵に向かない」)で、耐え難い経験をした主人公のピップ。
精神的に参ってしまい、眠れない日々を送ってるピップの様子が描かれます。

そんな彼女に、マックスから名誉毀損でピップが訴えられ、和解交渉をすることになります。
ピップはマックスが先の事件で無罪になったことが許せず、到底受け入れられず反故にします。

そんな中、彼女に付きまとうストーカーの存在が現れました。
無言電話、家の近くの道にチョークで書かれた首なしの棒人間の絵、首が切られた鳩の死体など、いくつも不可解なことが起こります。

ピップがよくよく調べると、実は数年前に起こった連続殺人事件と手口が似ていることに気づきました。
ただし、連続殺人事件の犯人はすでに捕まっていて、現在刑務所にいます。

連続殺人事件の犯人が、ピップのストーカーなのか?
マックスとの決着はどうつくのか?

ミステリー小説ではありますが、どちらかというと社会問題のテーマがメインだと思います。
それでもかなり読み応えはあるので、ぜひ読んでいただきたいです。

登場人物

ピッパ(ピップ)・フィッツ=アモービ:リトル・キルトン・グラマースクールの卒業生。18歳
ヴィクター:ピップの父。弁護士
リアン:ピップの母。不動産会社勤務
ジョシュア:ピップの弟

ラヴィ・シン:ピップの相棒。21歳
カーラ・ワード:ピップの親友。ナオミの妹
ナオミ・ワード:カーラの姉

コナー・レイノルズ:ピップの友人
ジェイミー・レイノルズ:コナーの兄

ローレン・ギブソン:ピップの親友
アンソニー(アント)・ロウ:ローレンの恋人。コナーの友人
トム・ノヴァク:ローレンの元恋人

マックス・ヘイスティングス:性的暴行容疑で起訴された青年

ナタリー・ダ・シルヴァ:マックスの暴行の被疑者
ダニエル・ダ・シルヴァ:ナタリーの兄。テムズバレー警察の巡査

ルーク・イートン:ナタリーの恋人

アンディ・ベル:1巻で亡くなった少女
ジェイソン・ベル:アンディの父
ドーン・ベル:ジェイソンの妻
ベッカ・ベル:アンディの妹

ロジャー・ターナー:ピップの弁護士
クリストファー・エップス:マックスの弁護士
ハッサン・バシール:マックスの名誉毀損訴訟の仲裁人

ビリー・カラス:5件の殺人で服役中の男性
マリア・カラス:ビリーの母

ジュリア・ハンター:DTキラーの犠牲者
ハリエット・ハンター:ジュリアの妹

チャーリー・グリーン:フィッツ=アモービ家の隣人
フローラ・グリーン:チャーリーの妻

リチャード・ホーキンス:テムズバレー警察の警部補
ディヴィット・ノーラン:ビリーを取り調べた主任警部

ジャッキー・ミラー:カフェのオーナー

スタンリー・フォーブス:亡くなったキルトン・メールの記者




「卒業生には向かない真実」の感想・考察(ネタバレあり)

非常に面白かったです!
他の巻と比べるとミステリー要素は少ないですが、ある意味冒険ものとして楽しめました。

ただし、最後の展開についてはかなり賛否両論があると思います。
すでに読んだ方ならわかると思いますが、最後のピップの行動を受け入れられるか否かで、この作品に対しての評価が変わるでしょう。
個人的な感想としては、創作としてはもちろんありです。ですが、現実のルールを持ち込むと”なし”です。

思えば1,2巻通し、本のテーマとして何が”正義”なのか?という著者の問いかけが散りばめられていました。
最後のピップの行動は果たして正義だったのでしょうか?
以下、センテンスごとに語りたいと思います。

全体的にどういう事件だったのか?

今回メインの事件となるのは、ピップのストーカー事件です。
最初はピップを憎む誰かによってのストーカー行為と思いきや、様々な出来事を元に調査した結果、数年前に起きた5件の女性殺人事件と手口が全く同じことがわかりました。

昔の事件を洗い出すと、事件当時に捕まった犯人は、警察の誘導尋問によって冤罪として容疑者にされた可能性の高い人物でした。
実際に容疑者を尋問している様子が描かれていたのですが、かなり酷かったです。誘導尋問すぎて、こんなことが罷り通るのかと目を疑いました。

その後いくつか調査をして犯人の尻尾を捕まえたと思いきや、逆にピップが犯人に捕まっていしまいます。
限りなく死に近づいた体験をしたピップは、今までの経験から答えを出し、自らが犯人に報復をします。

ここまでが物語の1部でした。
なんとも衝撃的な展開で、非常に驚きました。
あんなに自らの正義を貫いていた彼女が、今までの事件(特に前回の事件)によって警察も何もかもが信じられなくなり、私刑をしてしまうのです。

彼女の行動は”正義”だったのか?

さて、ここで彼女が起こした行動について語りたいと思います。
物語の2部では、ピップは自分が犯した私刑をマックスに罪を被せられるように、証拠を偽装します。

この行動は今までのピップからは考えられなかったのですが、彼女を変えたきっかけは「優等生は探偵に向かない」で起こった事件です。(詳しくは読んでください)

個人的にはピップの行動は”正義”ではないと思います。
マックスはクズでしたが、クズを自分勝手に裁いていたらそれはクズと同等の考え方です。

なので、ピップの行動は単なる自己正当化をした結果で、非常に悲しくてやるせなかったです。
感情論で考えるなら気持ちはわかりますが、感情論で語っていけないのが社会に対しての捉え方だと思いました。本当に辛いですが。

もちろん事件が起きた当時の精神状態が正常ではなかったというのは理由の一つでもありますが、彼女の心自体、非常に優しいゆえに起こった悲劇だと思います。

ここで思い出したのは最近人気になっている漫画の、「呪術廻戦」という作品の夏油傑です。
この漫画はファンタジーなんですが、作中に登場する夏油はピップと全く同じ道を辿っていました。

信じていた正義が信じられなくなった。守りたい人が正義では守れなくなった。
他者を思いやるがゆえに誤った道に進んでしまった姿が瓜二つでした。こんな人たちを現実社会で産んではいけませんね・・・

ピップ=著者だったことについて

最後のあとがきで、著者のホリーが現代の司法について非常に怒りを覚えていると書いておりました。
マックスの事件など、著者の自らの経験が元になったようです。

それを読んだ後に感じたことですが、ピップにあのような行動をさせてはいけないと思いました。
もちろん創作なんでキャラクターをどう扱うかは著者の自由ですが、ピップの行動を模倣する人が現実に出たらそれは非常に悲しいことです。

特に今回の作品はYAなので、これを読んだ子供は良し悪しの分別がつくのでしょうか?
ピップの行動は、まさに「目には目を、歯に歯を」です。

この作品をただの著者の怒りの小説にするのではなくて、著者自ら読書会などを開いて社会問題について話し合うほうが、未来にとってはいいのかと思います。(これくらい怒ってるならすでにやってそう・・・)

一番最後の展開について

一番最後に、テキストチャットの挿絵で物語の幕を閉じます。
恐らくラヴィからのチャットなんでしょうが、たぶんまだピップは事件から逃れることができ、ラヴィと再会することができる展開になるかなと予測しました。

ぶっちゃけラヴィも中々狂ってて、愛する人を守るがゆえの行動が見ていて悲しかったです。
何度もピップの行動を変えるタイミングはあったのにも関わらず、それをしなかったのが彼の罪だと思います。

話は変わりますが、他の伏線はどう決着するのかなと思いながら読んだのですが、触れられていなかったので不完全燃焼でした。(自分の見落としだったらすみません)

・ダニエルについては普通の人だった
・ルークへのお金は返済していない
・マックスへの慰謝料も返済していない(?)
・ベッカに真実も話していない

最後まで非常に考えさせられる展開でしたが、非常に読み応えのあるシリーズでした。




まとめ

恐らく自分がミステリー小説としてかなり期待していた分、今回の作品がミステリーよりもただの社会的な小説になっていたことが不服だったのかもしれません。
面白いには面白かったですが、著者の考えを投影し過ぎて読者側にも気づかれるほどの展開だった、というのがどうも気持ちよくなかったです。

個人的には2巻が一番面白かったです。

興味ある方はぜひ一度読んで、考えてみることをおすすめします。