誰の死体?(ドロシー・L・セイヤーズ)とは
「誰の死体?」とは著者のドロシー・L・セイヤーズが1923年に出版した、ピーター卿シリーズの1巻目です。
彼女の処女作なんですが、ちょうど同じ年にアガサ・クリスティが「スタイルズ荘の怪事件」を出しています。
日本ではあまり知名度はないんですが、アガサ・クリスティと並ぶ英国ミステリ作家としてとても有名です。
今回は「誰の死体?」について感想を語っていきます。
ピーター卿シリーズについて
ピーター卿シリーズの読む順番については、以下でご紹介しています。ご興味ある方はぜひご覧ください!
ピーター卿シリーズ(ドロシー・L・セイヤーズ)の読む順番一覧|貴族探偵の華麗なる謎解き
「誰の死体?」のあらすじ
あらすじ
実直な建築家が住むフラットの浴室に、ある朝見知らぬ男の死体が出現した。
場所柄、男は素っ裸で、身につけているものは金縁の鼻眼鏡のみ。一体これは誰の死体なのか?
卓抜した謎の魅力とウイットに富む会話、そしてこの一作が初登場となる貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿。
クリスティと並ぶミステリの女王が贈る会心の長編第一作!
ざっとあらすじを説明すると、ある家の浴槽から身元不明の男性の死体が発見されました。
被害者は裸で、金縁の小さな眼鏡を身につけている状態でした。
探偵を名乗るピーター卿は、知り合いの刑事パーカーから事件の詳細を聞いて、死体現場を見にいきます。
警察の見解では、その死体がサー・ルーベン・レヴィという金融業界の名士だと考えていますが、果たして一体誰なんでしょうか?
そして、なぜ浴槽に死体があったのでしょうか?
「誰の死体?」の感想(ネタバレあり)
ドロシーの作品を読むのは初めてでしたが、かなり好みの作品で面白かったです!
ミステリとしても読み応えあり、何といっても探偵役のピーター卿がスマートでかなりかっこいいです。
ですが、少し嫌味ったらしい性格でもあるので、苦手な方は合わないかもしれません。
特によかった点は、
・誰の死体か?というミステリが面白い
・ピーター卿のウィットに富んだ会話が面白い
以下語っていきます。少しだけネタバレがあるのでご注意ください。
誰の死体なのか?
この事件は後半ぎりぎりまで、死体の身元がわかりません。
DNAなどの検査はない時代なので、身体的な検査によって身元を特定します。
最初の見解では、昨夜から行方不明だったサー・ルーベン・レヴィだとしていました。
ただピーター卿がよくよく調べると、
・手にタコ、両足にひどいまめがある
・背中と片足一面に赤い痕がある
・メガネが老眼
・爪や指を噛む癖があった
・煙草常用
・髪や身だしなみは気を遣っていたようなのに、歯がいくつか無い。
など、見た目は綺麗にしていたのですが内側がまるで何日も手入れしていない状態でした。
この死体をサー・ルーベン・レヴィとしてみるのは難しい、となったんですがそれでは一体誰だ?という謎からスタートします。
その後、レヴィの関係者を調査していくんですが、これがかなり面白いです。
ピーター卿の思考の過程が順番に描かれていて、なるほどこういうふうに考えていくのか、と興味深く読みました。
特にp.107の犯人についての考察が中々読み応えあります。
ただ場面展開がサラッと書いてあるので、今主人公たちはどこにいるんだ?と疑問に思うところがありました。唯一読みにくかったのはそこですね。
最後の展開も非常に面白かったです。
トリック時自体は現代ではよく使われている手法ですが、当時からするとかなり斬新だったんじゃないかと思います。シンプルですが、上手く盲点を使った作品でした。
ピーター卿の会話が面白い
ミステリー小説は名探偵のキャラクターが重要なんですが、ピーター卿はかなりユニークで面白いです。
貴族らしくスマートな上に、ウィットに富んだセリフ回しがとても楽しかったです。
嫌味ったらしいので苦手な人がいるかもしれませんが、個人的に捻くれた人間が好きなので、結構楽しめました。
ピーター卿はどうやら著者の理想の男性だそうですが、まさに女性に人気がありそうなキャラクターでした。
物語の時代背景としては第二次世界大戦後で、ピーター卿も戦争のトラウマを抱えているようで途中で発狂していました。
ただのスマートな頭のいいキャラクターだけではなく、傷を抱える人間として描いているので、読者の心を掴むのが上手いなと思いました。
ピーター卿の従僕パンターも有能で気持ちいいし、友人の警部パーカーもユニークで読み応えがあります。
ミステリー要素も重要ですが、やはり物語を盛り上げるキャラクターも重要ですね。
まとめ
初めて読んだ著者ですが、クリスティ作品とはまた違った魅力のある作品でした。
読みやすさとパンチはクリスティ作品が勝ちますが、ドロシー作品もプロットの斬新さで負けていません。どちらかというとドロシーのほうがコアファンがたくさんいそうなイメージです。