「46番目の密室」(有栖川有栖)とは
「46番目の密室」とは、1992年に著者の有栖川有栖さんが書いた、名探偵火村シリーズの1巻目です。
密室殺人を取り扱ったミステリー小説で、今読んでも古さを感じさせない良質なミステリーとなっています。
今回は「46番目の密室」の感想を語っていきたいと思います。
火村英生シリーズについて
火村英生シリーズ(作家アリスシリーズ)の読む順番については以下でご紹介しています。
【最新版】火村シリーズ(有栖川有栖)の読む順番一覧|別名「作家アリスシリーズ」
「46番目の密室」のあらすじと登場人物
あらすじ
密室の巨匠が殺された 自らのトリックで――!? 日本のディクスン・カーと称され、45に及ぶ密室トリックを発表してきた推理小説の大家、真壁聖一。
クリスマス、北軽井沢にある彼の別荘に招待された客たちは、作家の無残な姿を目の当たりにする。
彼は自らの46番目のトリックで殺されたのか――。火村&有栖川シリーズ第1作! TVドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」でも話題の傑作シリーズ。
簡単にあらすじをご紹介すると、今回の事件はミステリの巨匠・真壁の自宅で、真壁と見知らぬ男性が焼死体として発見されたことから始まります。
死体があった状況は密室で、一体どういったトリックを使って殺人が行われたのか、誰がやったのか?という謎を臨床犯罪学者の火村と作家のアリスが調査していきます。
ちなみに今作の視点は作家のアリスです。本作の著者と同姓同名ですが、”別人格”とあとがきで言ってたのでご注意ください。
恐らく著者が好きなエラリー・クイーンのパロディだと思います。(著者もエラリー・クイーンで、作品に登場する探偵もエラリー・クイーン。紛らわしいですね)
エラリー・クイーンの作品一覧・シリーズまとめ【米国の本格ミステリー作家】
【最新版】国名シリーズ(エラリークイーン)の読む順番一覧|全11巻完結済み|新訳”日本カシドリの秘密”登場!
登場人物
・火村英生(ひむら ひでお):臨床犯罪学者
・有栖川有栖(ありすがわ ありす):火村の友人、推理作家
・真壁聖一(まかべ せいいち):推理作家、日本のディクスン・カーと呼ばれている。
・真壁佐智子(まかべ さちこ):真壁の妹
・真壁真帆(まかべ まほ):佐智子の娘
・檜垣光司(ひがき こうじ):同居人
・高橋風子(たかはし ふうこ):推理作家
・石町慶太(いしまち けいた):推理作家
・杉井陽二(すぎい ようじ):編集者
・船沢辰彦(ふなさわ たつひこ):編集者
・安永綾子(やすなが あやこ):編集者
・鵜飼(うかい):群馬県警視
・大崎(おおさき):長野原署警部
実はドラマ化も面白い
ちなみにこの作品はドラマ化もされています。
個人的にめちゃくちゃ面白くて大好きなので、ぜひ見てほしいです!火村役とアリス役の俳優さんがいい演技で面白いんですよ〜!
Huluなら2週間見放題(無料)なので、無料期間以内に見ることをお勧めします。
「46番目の密室」の感想(少々ネタバレ)
今作も読み応えあって面白かったです!
個人的に好きな著者さんの中に有栖川さんが入るんですが、文章の安定感があるので読んでいてホッとします。
読みやすいので、ミステリー初心者でも読めるところが素晴らしいと思います。
以下、詳しく語ります。(犯人の名前・トリックのネタバレはしません)
まず物語の導入で惹きつけられる
冬、別荘、とくれば殺人事件が起こるのがミステリー小説のあるあるですが、本作で一番面白いのが導入部分の「火事」の話です。
よくいろんな作品でもありますが、過去の場面を物語の最初に持ってきてその後に現代を語る流れが、読み手にとっても面白いんですよね。
なぜかというと、著者は関係ないことを書かないはずなので、後々関係あるのだろうという期待があるからです。
今回の火事では1人の消防士が殉職したという話で、読みながらこの過去が元に事件が起こるのかなと予想しました。
しかしこれが完全にひっかけで、後々の事件では関係なかったことが分かります。ここが上手くて結構面白かったです。
王道の探偵ぶりを見せる火村
このシリーズでの探偵役である火村は、きちんと自分の足で事件を調べて仮説を立てて推測するタイプです。
特に彼の特徴として、専門である犯罪心理学以外にも音楽や歴史、宗教などいろいろな知識を身につけていて、その能力の高さはずば抜けています。
万能な人間っぷりは有名なシャーロック・ホームズと似ていますが、一番良かったのは相棒のアリスが予想していた犯人と違う人の名前を挙げた場面です。
物語が始まりから読者はアリスの視点で事件を見てきましたが、気づかないところで誘導されアリスが予想する犯人を連想していた人が多いと思います。
このミスリードもよく出来ていてよかったんですが、その後の火村が語る真実には驚いた読者がほとんどだと思います。
私自身、ふつうに騙されたので非常に面白かったです。
思わぬ真実
ここでは詳細を書きませんが、火村が推測した事件の全貌と、犯人の語りで驚いた人がほとんどだと思います。
ただし、個人的に犯人の動機に違和感がありましたし、性癖にも無理がある設定だなと感じました。
最後の真実で思い出したんですが、エラリー・クイーンにも似たような作品がありました。
「最後の女」という著者の後期作品なんですが、あれもなかなか違和感のあるオチでした。
ご興味があれば読んでみてください。絶版ですが・・・
「46番目の密室」の中で登場した名作・場所・曲
著者の有栖川さんは本当にミステリーがお好きなんだなってくらい、世界的に名著な作品をいくつか挙げられています。
全部無理ですが、わかる範囲でご紹介していきたいと思います。
①エラリー・クイーン
有栖川さんと言えばエラリー・クイーンです!私も大好きな作家な一人なので、物語に出てくるとワクワクします。
1. 「九尾の猫」
p.129でミッシングリング(失われた環)のジャンルの一つとして紹介されましたが、被害者に共通点が一個もない場合に使います。
「九尾の猫」では、街で起こる連続殺人事件の被害者に一つも共通点を見つけ出せなくて、探偵のエラリーが苦悩します。
面白いのでぜひ読んでほしいです。
2. 「最後の一撃」
p.130でアリスが挙げてるこの作品。
これ中々異色の作品で、探偵エラリーが若い頃に解けなかった謎を50代になってやっと解ける、みたいな話です。
いろんな意味でよかった作品でした。
エラリー・クイーンの作品一覧はこちらで紹介しています。
エラリー・クイーンの作品一覧・シリーズまとめ【米国の本格ミステリー作家】
②「本陣殺人事件」/横溝正史
何ページか忘れましたが、この作品は金田一シリーズの1巻目です。
雪積もる夜、何者かが殺人を起こしたのに殺人現場には足跡が残っていなかったので密室事件が起こっていました。
こちらも面白いのでぜひ。
金田一シリーズの作品はこちらで紹介しています。
【決定版】金田一耕助シリーズ(横溝正史)の読む順番一覧|古谷一行のドラマ情報まとめ
③「ロックド・ルーム・マーダーズ」
p.251ありとあらゆる密室のトリックが書かれてる解説書。流石に価値がついてますね~ちょっと読んでみたい気もする。
④「血の翳り」/西村寿行
これは読んだことないです。
レビューを見てるかぎり、主人公が自分の血筋を探す話のようなのですが半分が性描写とバイオレンスだそうです。苦手な方はご注意ください。
⑤ロンドンのマーダー・ワン
こちらはロンドンにあるミステリー専門書店「Murder One UK」のことです。
現在は閉店してしまいましたが、オンラインでは営業しているようです。一回は行ってみたかったな~
→公式サイト
⑥「モルグ街の殺人」/エドガー・アラン・ポー
ミステリー好きだったらみんなご存じの名作です。
この作品がきっかけで「探偵小説」というジャンルができたようです。探偵が千里眼を持ってるかのごとく、天才的な推理力なのでちょっと面白いです。
⑦「ゴールデンベルク変奏曲」
アリスたちの事件が起こる前に流れていた曲は「ゴールデンベルク変奏曲」です。
バッハ作曲のチェンバロの曲で、バロック音楽に分類される少し陽気な音楽です。子守歌だそうですが、子守歌とは・・・
火村先生はグレン・グールドというピアノ奏者がファンらしいですが、彼が演奏したものが以下です。
小説「羊たちの沈黙」に登場するレクター博士と同じ趣味なのも面白い設定ですね。
まとめ
個人的に、有栖川さんの文章は読みやすくて好きです。
物語の運びもうまくて読み応えあり、探偵役の火村とワトソン役のアリスのやり取りがユニークなんで未だ続いてる理由がわかります。
ちなみに探偵と助手ものだったら、「御手洗シリーズ」もおすすめです。
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次の巻も近いうちに読もうと思います。