アクロイド殺し(アガサクリスティ)のあらすじと感想|論争を巻き起こした衝撃の名作

アクロイド殺し(アガサクリスティ)のあらすじと感想|論争を巻き起こした衝撃の名作

「アクロイド殺し」(アガサ・クリスティ)とは

「アクロイド殺し」とは、著者のアガサ・クリスティーが書いた名探偵ポアロシリーズの3巻目に当たるミステリー小説です。
今作は当時のミステリー界に衝撃をもたらした問題作で、今読んでもめちゃくちゃ面白いという名作です。

トリック自体がフェアかフェアじゃないかと言われたら、一応フェアです。
今回は「アクロイド殺し」について感想を語っていこうと思います!




「アクロイド殺し」のあらすじと登場人物

あらすじ
名士アクロイドが刺殺されているのが発見された。
シェパード医師は警察の調査を克明に記録しようとしたが、事件は迷宮入りの様相を呈しはじめた。

しかし、村に住む風変わりな男が名探偵ポアロであることが判明し、局面は新たな展開を見せる。
ミステリ界に大きな波紋を投じた名作。

いつもでしたらヘイスティングズ大佐の視点だったのですが、彼はもう結婚して幸せいっぱいの男ですので今回は別の語り手になります。(詳しくは前巻「ゴルフ場殺人事件」)

語り手は、キングズ・アボットで村医師をやっているジェームズ・シェパード(本書では”わたし”)です。
今回は村で起こる不可解な殺人事件を、ポアロとシェパードがタッグを組んで謎を解いていきます。

最初の事件は、フェラーズ夫人が睡眠薬の飲みすぎで亡くなってしまいます。
診察を担当したシェパードは自殺だとしていましたが、姉のキャロラインは「良心の呵責によって自殺したのよ!」という持論を展開します。

その後、地主のアクロイドが自宅で刺殺されてたのをシェパードが発見します。
果たしてこの事件に関連性はあるのでしょうか?
そして、犯行動機は何でしょうか?

おそらくこの作品は考えながら読むとさらに面白いと思いますので、ぜひ考えてみてください。

登場人物(ネタバレあり)

エルキュール・ポアロ:私立探偵
アーサー・ヘイスティングズ:ポアロの友人(今回は出てこないが、ポアロが寂しがってる・・・)

ロジャー・アクロイド:地主
ラルフ・ペイトン:ロジャーの義子
セシル・アクロイド夫人:ロジャーの義妹
フローラ・アクロイド:セシルの娘

ジェフリー・レイモンド:ロジャーの秘書

ジョン・パーカー:ロジャーの執事

ミス・ラッセル:アクロイド家の家政婦

アーシュラ・ボーン:アクロイド家の小間使い

ヘクター・ブラント:ロジャーの旧友、少佐

フェラーズ夫人:キングズ・パドック屋敷の未亡人

ジェームズ・シェパード:医師
キャロライン:ジェームズの姉

実写ドラマもあるよ!

ちなみにこの作品は映像化もされています。
日本版は、脚本家の三谷幸喜が担当しています。ちょっとコメディぎみなんですが、かなり良くできていましたので、ぜひご覧ください。
「黒井戸殺し」

洋画版は、ポアロ役デビット・スーシェが担当しています。こちらは原作のままだし、ポアロ役はどハマりしてる俳優さんなんで、面白いです!
「シーズン5エピソード1 – #46 アクロイド殺人事件」




「アクロイド殺し」の感想(一部ネタバレあり)

この作品自体、読むのは2回目なんですがめちゃくちゃ面白かったです。
ただ、この作品は最後の展開や犯人に驚かされてしまうものなので、さすがに2回目は犯人を知っている前提で読みました。

ぶっちゃけ初めて読んだ方だとよくわからない人が多いと思います。
そんなときは一番最後の解説を読んでみてください。かなり丁寧に説明しているので、著者がやりたかったことがわかって面白いです。

以下、ネタバレがありますので未読の方は見ないでください。

犯人当てられた人おる・・・?

一番気になったのは、読者で犯人を当てられた人はいるんでしょうか。(私はもちろん当てられませんでしたので、最後にしてやられました!)

今作は後からわかってくるとおり、”手記”の形式になっています。
一番わかりやすかったのは、シェパード医師がポアロに原稿を渡したシーンです。あれで今までの文章は原稿そのものだと気づくようにできています。

そして手記なので面白いくらいに大事なところが省かれ、シェパード医師の主観が入っていないところが問題点でした。
そのため、読者からすると今まで読んできたものは一部脚色、もしくは重要な部分が抜けているのかもしれない、ということなります。
(一応その前でもいくつか違和感が感じられるように書かれていますが)

これが世の中でいう、”信頼できない語り手”という手法の作品ですね。もしかしたらこの作品が一番最初に使われた手法なのかもしれません。いやー恐れ入りました女史!!

余談ですが、たまに世の中で信頼できない語り手、という言葉で作品を紹介するものがありますが、これ言うと究極のネタバレになるやん・・・って思ったりします。使わないほうがいいのでは。

ポアロの名推理は異常

それにしても、作中のポアロの推理は素晴らしかったです!
所々でしかポアロの行動は見れませんでしたが、最初から犯人に目星がついていたなんて凄まじいですね。

しかもシェパード医師の原稿を読んだ時ん解いてしまったのだから、やばいです。
読者も同じ条件で推理できるはずなのに、本当に盲点すぎて読み終わった後も愕然としていました・・・

最後の「編み上げ靴の証明」なんて、素晴らしいの一言です。考えてみればそうですが、提示された材料をうまく組み合わせないと無理ですね。
まさに論理的なミステリー作品でした。

ポアロの行動の意味と、犯人の性格とは?

まさかの展開として、最後はポアロが犯人に自殺を促します。一体なぜなんでしょうか?

こればかりはポアロのいうとおり、”キャロラインのため”というのが一番だと思います。
ただ結局、次の日弟が亡くなっているところを見たらキャロラインは絶対察すると思います。ポアロもキャロラインに調査を依頼しましたし。

キャロラインはおせっかいの一面もありますが、基本的には良い人です。
ですが、弟はそうではなかったようでなんとも残念な結果になってしまいました。

それもそのはず、よくよく考えてみれば我々読者は犯人の性格を正しく読み取れていません。

最後まで主観がほとんどなく、考えられるのは一人目を手にかけた時はさすがに気が動転していたことから、案外小心者だということ。
そして、全財産、油田に投機するほどハイリスクを取れる人間。(博打が好きなのか?)

思えば結構金に目がない人間だったことがわかります。そして虚栄心を満たすために、手記に残したこともなかなか面の皮が厚い男です。
でも唯一お姉さんには温情をかけることができる、となるとどうしようもない人間ですね。

なんかもう一度読んだら、犯人の性格を読み取れそうな気がします。




まとめ

今作は間違いなく名作です。
作中で普通にポアロが解いてたんですから、読者にもフェアであるはずです。私はもう解答権がありませんが・・・

まだ未読の方が羨ましいです。もう読んだ方も、ぜひ忘れたころに一緒に読みましょう。

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