スリーピング・マーダー(アガサ・クリスティ)のあらすじと感想|マープルの秀逸な最後の事件

スリーピング・マーダー(アガサ・クリスティ)のあらすじと感想|マープルの秀逸な最後の事件

スリーピング・マーダー(アガサ・クリスティ)とは

「スリーピング・マーダー」とは、著者のアガサ・クリスティーが書いた名探偵マープルシリーズの12巻目に当たるミステリー小説です。

実はポアロシリーズの最終巻「カーテン」と同じ年に書かれた作品です。
マープルシリーズの最終巻なんですが、かなり面白く、往年のクリスティらしく物語構成や人物描写が熟練された作品です。

今回は「スリーピング・マーダー」について感想を語っていこうと思います!

ミス・マープルシリーズの読む順番について

こちらのシリーズについては以下で解説しています。ご興味ある方はぜひ御覧ください!

【決定版】マープルシリーズ(アガサクリスティ)の読む順番をご紹介! 【決定版】マープルシリーズ(アガサクリスティ)の読む順番をご紹介!

アガサ・クリスティのおすすめ作品については以下でご紹介しています。

アガサクリスティおすすめ世界ランキングTOP22|初心者も読みやすい隠れ名作もご紹介 アガサクリスティおすすめ世界ランキングTOP22|初心者も読みやすい隠れ名作もご紹介

スリーピング・マーダー(アガサ・クリスティ)のあらすじと登場人物

あらすじ

若妻グエンダはヴィクトリア朝風の家で新生活を始めた。だが、奇妙なことに初めて見るはずの家の中に既視感を抱く。

ある日、彼女は観劇中、芝居の終幕近くの台詞を聞いて突如失神した。

彼女は家の中で殺人が行なわれた記憶をふいに思い出したというが……ミス・マープルが回想の中の殺人に挑む。

おおざっぱに説明すると、過去に起こった不可思議な事件を主人公のグエンダとその夫、マープルの三人が探っていく話です。

始まりはイングランドのディルマスで、妻グエンダが夫婦のための家を探している時に何故か既視感を感じる家を見つけました。
彼女は気に入ってその家を改装しようとするのですが、どうもどこかで見たような記憶があります。

違和感を感じる中、息抜きに向かった観劇で「女の顔をおおえ、目がくらむ、彼女は若くして死んだ」というセリフを聞いた瞬間、悲鳴を挙げて逃げ出します。

この時グエンダは、観劇によって小さい頃にヘレンという女性が階段下で死んでいたのを見た記憶を思い出しました。しかも、自分が今から住もうとしている今の家で。

知り合いのレイモンドにマープルを紹介され、グエンダたちは気になってその記憶について調査をするのですが、どうやらヘレンは自分の継母だったことが発覚します。

ミステリーの中では珍しい「回想中の殺人」をテーマにした、読み応え抜群の作品となっています。

登場人物(ネタバレあり)

キャラクターはネタバレになってしまいますので、読んでから見てほしいです…!
※脇役は省略しています。メインの登場人物だけ掲載します。

ジェーン・マープル:セント・メアリ・ミード村に住む探偵好きな独身の老婦人。レイモンド経由で、グエンダの悩みを聞く。

レイモンド・ウェスト:マープルの甥。小説家。

グエンダ・リード:ニュージーランドから来た新妻。観劇中に殺人事件の記憶を思い出す。

ジャイルズ:グエンダの夫。ウェスト夫妻のいとこ。真面目でいい人。

コッカー夫人:家政婦。

フォスター:庭師。

ケルヴィン・ハリデイ:グエンダの父。数十年前に死亡。

ヘレン:ケルヴィンの後妻。ケルヴィンとは船上で出会う。

ジェイムズ・ケネディ:ヘレンの兄。医師。

ベンローズ:ケルヴィン担当の精神科医。

ウォルター・フェーン:弁護士。ヘレンの元婚約者。

エリノア:ウォルターの母。おしゃべり。

イーディス・パジェット:ハリデイ家の元料理人。

リリー・キンブル:小間使い。

レオニー:スイス人の子守り。

リチャード・アーキンソン:退役少佐。ヘレンとは船上で出会う。

ジャッキー・アフリック:観光会社経営者。ヘレンの元恋人。

プライマー:警部。

スリーピング・マーダー(アガサ・クリスティ)の感想(一部ネタバレあり)

非常に上手い作品でした。そしてめちゃくちゃ面白かったです。
個人的にはマープルシリーズは初期よりも後期の作品が好きなんですが、読み応えがあってかなり高評価なほうです。

面白かった点は、以下です。

・「回想中の殺人」というテーマが面白い
・ミスリード上手すぎる


※回想中の殺人とは、記憶の中の事件を解決するテーマのことです。(「五匹の子豚」も同じテーマなので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。)

以下、少々ネタバレに近いことを書きますが、犯人とトリックについての詳細は書きません。詳しくは読んでください!

回想中の殺人が面白い!

今作はテーマを上手く表現出来ているところが良かったです。
ポアロの「五匹の子豚」もかなり面白かったのですが、クリスティの人物描写が上手いからこそ、このテーマとの相性がばっちりです。

今までマープルが口酸っぱく言っていますが、通常人の記憶は曖昧なもので、話すことでさえ嘘をつくことがあります。
今回は、グエンダが思い出した幼少期の記憶を信じるかどうか、そしてヘレンの人柄について考えることがポイントになります。

途中で、グエンダの記憶違いなんじゃないか?という証拠に、義兄ケネディ宛に来たヘレンの手紙が登場します。
筆跡鑑定したらヘレンの筆跡だったようで、そこでヘレンが生きてる説が浮上してきました。

ヘレンは生きてどこかにいるのか?もしくはグエンダの記憶通り、すでに死んでいるのか?
グエンダたちは調査を進めるのですが、今度は何者かにヘレンの小間使いだったリリーが殺されます。

やはりヘレン殺しを誰かが隠すために…?という展開になり、容疑者としてヘレンが生前に関係のあった男たちが浮上します。
果たして誰なんでしょうか。ぜひ読んで騙されてほしいところです。

相変わらずミスリードが上手すぎる

この作品の一番の見所は、なんと言ってもミスリードが秀逸な点です。
先程も言いましたが「回想中の殺人」がテーマなので、ほとんど調査は周辺人物の証言のみで構成されます。

テーマ的にもミスリードを仕掛けやすいのだと思いますが、それにしても上手すぎます。

私が一番騙されそうになったのは、ヘレンを殺したであろう容疑者を調査している際、一番怪しいキャラクターが登場した場面です。
ちなみに読んだ人は絶対引っかかると思います。(しかも犯罪者らしい過去があることを提示するので。)
クリスティ作品としてはよく使われる手なんですが、自然に読者を誘導してくるので、惑わされます。

その誘導も上手いんですが、最後の最後でクリスティは大きな伏線をもっと前から仕込んできたところが天才的です。
勘の良い読者なら、今回の事件の性質とヘレンについて薄々気づいたかもしれません。

個人的に犯人は当てられたのですが、トリックというかまんまとクリスティのミスリードに騙されました。
余談ですが、フェーンの母親が言ってた3人の子持ち男性と、アースキンが一致しなくて、最後まで船で出会った別の男がいると勘違いしてました。(アースキンが2人の子供がいると言っていたので。)

結果、ただの嘘だったことが発覚するんですが、これもわざとだったのか・・・とやられました。

まとめ

最後の最後まで、読み応え抜群の作品を出してくるあたり、クリスティは最後まで天才だったんだなと思いました。
ミステリー的には犯人は手紙をどうやって用意したんだとか、事件当時はよく警察に騒がれなかったなーとかツッコミどころが少しありましたが。

ですが、総合的に面白かったので非常に満足です。

マープルシリーズはポアロと違って派手な事件もなく、人物描写に重きを置いたシリーズだったので最初は微妙でした。
しかし大人になってから読むと、むしろマープルが面白い!と思えるほど熟練されたミステリーだったので、読めてとても良かったです。

長々と書きましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。まだ読んでいない方や久しぶりに読みたい方など、ぜひお手に取っていただければ幸いです。

    マープルシリーズの感想一覧

  1. 牧師館の殺人
  2. 書斎の死体
  3. 動く指
  4. 予告殺人
  5. 魔術の殺人
  6. ポケットにライ麦を
  7. パディトン発4時50分
  8. 鏡は横にひび割れて
  9. カリブ海の秘密
  10. バートラム・ホテルにて
  11. 復讐の女神
  12. スリーピング・マーダー