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鏡は横にひび割れて(アガサ・クリスティ)のあらすじと感想|ホワイダニットの秀逸作

鏡は横にひび割れて(アガサ・クリスティ)のあらすじと感想|ホワイダニットの秀逸作

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鏡は横にひび割れて(アガサ・クリスティ)とは

「鏡は横にひび割れて」とは、著者のアガサ・クリスティーが執筆した名探偵マープルシリーズの8巻目に当たるミステリー小説です。

前作とまた違った雰囲気の物語ですので、ぜひミステリー好きには読んでほしいです。
もしかしたら、読む年齢や性別によって違った角度で楽しめる物語かもしれません。

今回は「鏡は横にひび割れて」について感想を語っていきます!

ミス・マープルシリーズの読む順番について

こちらのシリーズについては以下で解説しています。ご興味ある方はぜひ御覧ください!


【決定版】ミスマープルシリーズ(アガサクリスティ)の読む順番一覧|完結済み
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アガサ・クリスティのおすすめ作品については以下でご紹介しています。

アガサクリスティおすすめ世界ランキングTOP22|初心者も読みやすい隠れ名作もご紹介
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鏡は横にひび割れて(アガサ・クリスティ)のあらすじ

あらすじ
穏やかなセント・メアリ・ミードの村にも、都会化の波が押し寄せてきた。
新興住宅が作られ、新しい住人がやってくる。

まもなくアメリカの女優がいわくつきの家に引っ越してきた。
彼女の家で盛大なパーティが開かれるが、その最中、招待客が変死を遂げた。呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵ミス・マープルが挑む。

物語は、古き良き田舎だったセント・メアリ・ミード村が、だんだん都会化していく描写から始まります。
村に住むマープルは昔と違った村の様子に動揺しましたが、人間の本質は変わらないところに気づいてホッとします。

そんな中、村のゴシントン・ホールに引っ越してきたアメリカの女優がパーティを行います。

しかし、パーティーの最中に招待客の一人であるヘザー・バドコックが殺されます。
死因は毒殺なんですが、飲んでいたカクテルの中に混入されていました。

犯人を捜そうにもカクテルの中に薬を入れた人が見つからず、捜査が難航していく事件ですが、果たしてマープルは謎を解けるのでしょうか。

ちなみに、事件が起こったゴシントン・ホールは以前パントリー夫妻が使用していました。
そこでも殺人事件が起こっていたのですが、詳しくは「書斎の死体」に載っています。
合わせて読むと面白いです。(時系列は前になります)

また、今回登場する刑事ダーモット・クラドックは、3回目の登場です!
・1回目「予告殺人
・2回目「パディントン発4時50分
思えば彼が登場する作品は名作ばかりです。個人的にマープルを敬っているので好き。

実写ドラマもあるよ!

ちなみにこの作品はBBC(イギリスの放送局)でドラマ化もされています。
個人的に見応えがあって面白かったので、気になる方は観てみてください!

配信されているサービスリスト
※各リンクをクリックすると、直接「鏡は横にひび割れて」の動画ページに飛びます。

基本的にどこの配信サイトも30日間は無料なので、お試しで入ってみてもいいかもしれません。
ちなみに私はアマゾンプライムに入ってるので、そちらで見ました。



鏡は横にひび割れて(アガサ・クリスティ)の感想(ネタバレあり)

今回も非常に面白く興味深い作品でした!

今までの事件と系統が違っていて、「動機」が不確定な事件でした。今までは金や名声、恨みつらみが多かったのですが、その動機が不透明でほとんどわからなかったです。悔しい。
ただミステリー小説を読み慣れてる方は、直感で犯人がわかると思います。

特に面白かった点は、以下です。

・田舎の村が都会へと変わっていく
・事件の巧妙さ
・詩との絡み合いが上手い

田舎の村が都会へと変わっていく

本作は1962年の作品なので、第二次世界大戦が終わった後の時代だと思います。

物語の冒頭はセント・メアリ・ミード村に新興住宅が建ち、都会から新しい住人が増えていき、村の商店街もスーパーマーケットができていく様を描いています。
人間の生活感覚も変わって生きて、戦争後の原爆や女性が家事ではなく働きにいくことなど、価値観がどんどん変わっていきます。

マープルシリーズをここまで読んでいる方には、この時代が移り行く様がかなり面白いと思います。
実際にマープルが動揺している様子は、自分が時代に取り残されている感覚を彷彿とさせるもので、そういう感情にもなるだろうなと共感を覚えます。

地味にびっくりしたのは、シリーズ1巻目「牧師館の殺人」に登場したミス・ウェザビーが亡くなっていたことです。

牧師のレナード・クレメントも物語で少しだけ活躍するのですが、名前すら登場しなくなったのでとても寂しかったです…
彼の性格が好きだったので…

時代が移り行く描写がこんなにも切なさを感じるとは思いませんでした。

ですが、物語の中でマープルは新しい時代にも前向きに生きていこうとしていたので、事件が悲しい反面、少し心が温まった気がします。

事件の巧妙さ

さて本題の事件についてですが、今回は色々と惑わせ要素がありながらもよくよく考えれば一人しか正解は考えられない作りになっています。
私が非常に上手いなと思ったところは、今回の被害者ヘザー・バドコックが毒殺される前にどういう行動をとっていたか、という箇所です。
この箇所は事件の関係者の証言しかなく、実際の描写は書いてありません。

そのため、著者クリスティはどうとでも読者を誘導させることができます。これがお上手でした。

特に、命を狙われたとされる女優マリーナがヘザーとの会話中に一度ショックを受けた表情をしていたというところがミソでした。
ここの証言などに結構引っ掛けがあって面白かったです。

詩との絡み合いが上手い

今作のタイトルは「鏡は横にひび割れて」です。
これは、アルフレッド・テニスンの詩『シャロット姫』の一部から抜粋されたものです。

織物はとびちり、ひろがれり
鏡は横にひび割れぬ
「ああ、呪いはわが身に」と、
シャロット姫は叫べり。

まあこの詩は、呪いがシャロット姫にかかってしまった、というそのままの意味です。

なぜこの詩が引用されているかというと、「事件が起こる前に、マリーナがヘザーとの会話中、相手の肩越しに正面の壁を見つめていた。凍りついたような表情をした」とバントリー夫人は、まさにシャロット姫のような表情だったと証言しています。

これは恐らくマープルたちには当たり前の常識だったのかもしれませんが、詩を知らない人にとってはどういう表情だったのかあまり想像つきません。

なぜこの詩が引用されたのか?
マリーナは何を見つめていたのか?

いろんな人の証言を照らし合わせながら、最後を読むと驚くべき事実が発覚します。
恐らく読者によってすぐに気がつく人がいると思います。

ぜひ最後まで読んでいただきたい作品です。



まとめ

非常に面白い作品でした。
ぶっちゃけ今回の犯人は好きではありません。いろんな犯人に共通することですが、自分勝手がすぎる犯人でした。

たしかにある一点だけを見ると一種の悲劇が起こった事件ですが、同情の余地はありません。

最後、マリーナの夫はどちらの行動を選択したのでしょうか。気になるところですが、マリーナはなんて幸運な人なんだろうと思います。
マープルシリーズの中でも隠れた名作だと思うので、ぜひ未読の方は読んでみてください!