「六人の嘘つきな大学生」(浅倉秋成)とは
「六人の嘘つきな大学生」とは、著者の浅倉秋成が2021年に執筆したミステリー小説で、2024年に映画化されたほどのの人気作です。
ぶっちゃけ最初これを読んだ時、あー絶対映画のほうが映えるだろうなーと思った作品でした。もちろん小説もよかったです。
ちなみに、このミステリーが読みたい!2022年版の8位にランクインしています。
今回は「六人の嘘つきな大学生」について読んだ感想を語っていきたいと思います!
「六人の嘘つきな大学生」のあらすじと登場人物
あらすじ
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。
最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。
それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。
内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
本作品は、主人公の波多野祥吾の目線で事件の様子が語られます。
波多野は現在就活生で、誰もが羨む最先端のSNS会社「スピラリンクス」の最終選考として、他勝ち上がってきた6人でディスカッションをするという課題に取り組むことになりました。
最初はディスカッションして印象が良ければ、全員合格という話でしたが、直前に企業から選考内容が変わりました。
それが6人の中から1人だけ内定を出す、という内容です。
誰もがなんとも言えぬ感情を持つ中、最終選考を当日に迎えるのですが、そこでは思いもよらない事件が起こりました。
果たして誰が無事内定を獲得するのでしょうか?そして事件の犯人はいかに?
登場人物
・波多野祥吾:立教大学経済学部。散歩サークルに所属している。ちょっと嶌さんが気になっている
・嶌衣織:早稲田大学社会学部。ジャスミンティーが好き。お酒は飲めない
・九賀蒼太:慶應大学総合政策学部。まごうことなくイケメンで、チームのリーダー的存在
・袴田亮:明治大学国際日本学部。高校では野球部で、コミュニケーション力が優れている
・矢代つばさ:お茶の水大学国際文化学部。強気な美女でお酒が強い。海外旅行が好き
・森久保公彦:一橋大学社会学部。真面目。チームが苦手だが、最終選考に残ったチームはなんとなく好いている
・鴻上達章:スピラリンクスの人事部長
「六人の嘘つきな大学生」の感想・考察(ネタバレあり)
最初にも言ったとおり、この作品はまさに映像化が向いてる作品だなというのが一番先に出た感想でした。
小説の内容としては面白く、何よりも読みやすくて理解しやすいので、初めてミステリー小説を読む方にはおすすめの作品です!
そもそも題材が就活なので、大学生以上の人間には全員に刺さる内容なところがお上手でした。みんな一回通ってるし。
ただ、個人的にはミステリー読みすぎたせいか、軽めの読み物みたいな感じだったので次
以下ではちょっとネタバレを入れながら詳しく感想を語ります!(犯人・トリックのネタバレはしません)
そもそもどういう事件だったか?
非常にわかりやすい文章だったので、解説するまでもないかもしれませんが整理します。
企業の最終選考がディスカッションというのが犯行の舞台なんですが、なぜか選考中の部屋の隅に白い封筒が置いてあり、その中身が参加メンバー6人の裏の顔を暴露している、というものでした。
ディスカッション中はカメラが用意されており、別室で人事が見ている状況です。
その中で自分たちの裏の顔がバレたら、印象は最悪で、選考落ちするのが確定します。
一体白い封筒を置いたのはだれなのか?というのが今回の大きな謎でした。
ちなみに最終的に選考に受かったのは嶌衣織でしたが、いろいろな大きな謎を残して一旦物語は終わります。
しかしその10年後に今度は犯人探しをする、という展開で読者を惹きつける内容となっていて、ここが非常に面白かったです。
6人の裏の顔とは?
ここでは各キャラの暴露された裏の顔を書きたいと思います。
嶌についてはせっかくなので伏せておきます。勘のいい人は最初のほうで気づくと思います。
①袴田亮:高校時代、野球部に所属していた一人の学生を自殺まで追いやった
②九賀蒼太:一人の女子学生を妊娠させ、中絶させた
③矢代つばさ:バイトで水商売やってる女
④森久保公彦:高齢者対象のオーナー商法の詐欺に加担していた
⑤波多野祥吾:未成年の時に飲酒していた
⑥嶌衣織:???
改めて整理すると、一番インパクトがあるのは袴田と九賀だけであとはあんまり・・・という感じでした。
もう少しすごい人がいるともっと面白いな〜と個人的には思ったのですが、恐らくその後の展開的に難しかったのかもしれません。
ただ、間違いなく面接の場でやられたら犯人に対して殺意メラメラなの間違いないです。一生に一度ですし。
逆に殺人事件が起こらなくてよかったですね。
嶌衣織の好きな人
これはみんな気づいているかもしれませんが、最後のほうで嶌衣織の好きな人について伏線がありました。
最後のほうで「あんなのほとんど好きな人投票みたいなもんじゃん」と波多野の妹が言います。
まさしく言い得て妙で、それに対して嶌は本当に鋭い考察だ、と言います。
この発言からおそらく嶌がディスカッションしていた当時に好意を持っていたのは、九賀です。
理由は最初から最後まで、彼女は九賀に票を入れていたからです。
読んでいてどう考えてもおかしいな〜理由はなんだろうと思っていたのですが、波多野も嶌に対して同じことやっていたので一種の伏線でしたね。
最後の文を読んでなるほどと納得しました。
恐らく好きな人だから最後までデマだと信じていたのかもしれません。
というか途中の九賀へのインタビューで彼も(彼女の好意に)気づいてた、みたいなセリフがありますので読んでみてください。
人間の印象がコロコロ変わる怖さ
今回は就活の話ですが、就活をやったことがある人なら共感の嵐で、就活生の気持ちわかるな〜とずっと思っていました。
中途採用でのスキル的な基準がないので新卒の採用って採用基準がかなり曖昧で、割と運と大学要素が選考基準として強いです。
当時はここがいやだな〜と思ったところなんですが、本書では人事について非常に皮肉っているところが非常に笑いました。
最初のほうで人事の鴻上さんがインタビューを受けているシーンでは、結局採用された彼女が問題ない人物だったからいいものの、何回も受けた面接によって彼女の別面を見抜くことはできていない様子に見えました。
また、事件の合間にあった各キャラへのインタビュー、そして波多野祥吾が残した各キャラの別の顔の公表、どんどん出てくる情報に読者は「なんだ〜結局いい人だったんじゃん」みたいなことを思うに違いありません。
こういう作りも著者の皮肉を感じるのですが、人間に対しての印象の不安定さは誰もが感じるところだなと思います。
多くの情報が溢れる中、相手の何を信じていいのかはそれぞれが判断するしかありません。
ミステリーを読んでいたはずなのに、途中から人間の印象について考えさせられて非常に面白かったです。(著者はそんなつもりないと思いますが)
まとめ
初の著者さんでしたが、非常に整理されている文章でスルスルと読めてしまいました。面白かったです。
人が死なないミステリーなので、ぜひミステリーが初めての方などに読んでいただきたい作品です!
今回の作品が好きな方は、「名探偵のいけにえ」もおすすめです!
読みやすいし、最後の種明かしが面白いので、よろしければ。
以下は感想です