四つの凶器(ディクスン・カー)のあらすじと感想|バンコランシリーズ5巻目

四つの凶器(ディクスン・カー)のあらすじと感想|バンコランシリーズ5巻目

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「四つの凶器」(ジョン・ディクスン・カー)とは

「四つの凶器」とは、アメリカ作家のジョン・ディクスン・カーが1937年に執筆したバンコランシリーズ5巻目です。
残念ながら、予審判事バンコランシリーズ最期の長編作品となります・・・個人的には結構面白かったです!

今回は「四つの凶器」について感想を語っていきます。

バンコランシリーズの読む順番について

予審判事バンコランシリーズについては、以下でご紹介しています。

アンリ・バンコランシリーズ(ディクスン・カー)の読む順番一覧|全6巻完結
アンリ・バンコランシリーズ(ディクスン・カー)の読む順番一覧|全6巻完結



「四つの凶器」のあらすじと登場人物

あらすじ

依頼人であるラルフ・ダグラスと高級娼婦ローズの関係を清算するべく青年弁護士リチャードがパリ近郊の別宅に到着した時、娼婦はすでに寝室で事切れていた。

死体発見現場からは、カミソリとピストルと睡眠薬、そして短剣がいつかる。
過剰に配置された凶器は何を意味するのか。

不可能犯罪の巨匠カーの最初期を彩った名探偵アンリ・バンコランの”最期の事件”を描いた力作長編。

今回はバンコランが予審判事をやめて娯楽で地主になった時間軸になります。
予審判事をやめてからのバンコランは、きっちりとした身だしなみをやめて髭を伸ばしっぱなしにしたり、以前のような面影はありません。(寂しい・・・)

そんな中、カーティスの上司ハントから高級娼婦殺害事件の調査を依頼され、カーティスと共にバンコランは調査を開始します。
残念ながらジェフがいないんですが、代わりにカーティスがちょっとしたワトソン役なので、そこも見どころです!

登場人物

アンリ・バンコラン:パリの元予審判事
ジェフ・マール:バンコランの友人。登場しないけど、バンコランがいっぱい名前出すから・・・

リチャード・カーティス:ロンドンの事務弁護士

ラルフ・ダグラス:パリ在住の富裕な青年
ブライス・ダグラス:ラルフの兄。外交官

マグダ・トラー:ラルフの婚約者
ミセス・ベネディクト・トラー:マグダの母親。旅行代理店社長

ローズ・クロネツ:ラルフの元愛人。高級娼婦
ルイ・ト・ロートレック:ローズの現在の愛人。某閣僚の私設秘書
オルタンス・フレイ:ローズの元女中
アネット・フォーゲル:ローズの現在の女中

エルキュー・ルナール:巡査

ジョージ・スタンフィールド:トラー観光のパリ支店長

コンラート判事:新聞記者。筆名「オーギュスト・デュパン」

ド・ラ・トゥールセッシュ侯爵夫人:上流相手の私的な賭博場を開催

デュラン:パリ警視庁の警部



「四つの凶器」の感想(少しネタバレあり)

シリーズの中では上位に食い込むほど、結構面白かったです!
今回の事件は、登場人物たちのアリバイが結構複雑で、どちらかというとパズル要素がありました。
(内容は違うけど、エラリークイーンの「ローマ帽子の謎」みたいな感じ)

ただやっぱり訳だけはちょっと微妙でしたね。新訳が出たらもう一回読みたいと思ってます。

面白いくらいに凶器が用意された現場

今回の事件は、かなり複雑な事件でした。何が複雑かというと、容疑者たちのアリバイです。
きちんと読み込まないと全然理解できないので、ある意味大変でした・・・。

まず、高級娼婦のローズが亡くなっていた場所は寝室です。
そこで発見されたのは、タイトルにもある通り「4つの凶器」です。

・二二口径のピストル
・大型カミソリ
・睡眠薬
・短剣

最初にカーティスが推理したのは、被害者の死因はカミソリによる失血死です。
ですが、途中でバンコランが参戦してだんだんと事件の様子が変わっていきます。

そして事件周辺にいる「謎の茶色の男」が誰なのか、という問題がつき回ります。
最後の最後でバンコランが犯人を炙り出すために賭博場で容疑者たちを集めて、カードゲームをしていました。
この場面が一番面白かったです。ぶっちゃけ事件そっちのけで、カーティスとロートレックのどちらが勝つのかが見ものでした!

最後の終わり方も秀逸で、一世一代の大勝負がつく前に犯人が捕まってしまったので、最後の結果が読者の想像に任せるタイプの終わり方でした。
多分カーティスが負けたのかな〜と思ってますが、バンコランが一瞬だけ沈んだ顔になっていたのが気になります。

バンコランの手腕

実は本作品は前の巻である「蝋人形館の殺人」を読まずにいたので、ジェフくんとバンコランの心理状況を知らないまま読んでいました。
なので最初はバンコランのあまりの老けようにびっくりしてしまいましたし、ジェフくんがいないのもすごく寂しかったです。

ですが、やはりバンコランの手腕は衰えることなく、マグダやオルタンスなどの尋問に対してはキレキレで、読んでいてとても面白かったです。
舐めてた相手から一本取るのって気持ちいいですよね。

途中のマグダの尋問にはヒヤヒヤしましたが、マグダに対するカーティスくんの一言が、
「あなたが何をしたのかなんて誰が気にします?分別がある男なら天寿を全うするまで、あなたの顔を眺めて暮らすのが本望ですよ」
という発言が男前すぎて、思わずヒュー!と口笛を吹きたくなりました。これは名言。(p.250)

最後らへんで、カーティスとマグダが逃避行しようとした時、バンコランが行く先に現れていたのは笑いました。
ここらへんは若いものを応援しよう、みたいな足長おじさん感が出ていてよかったです。

もう彼の推理が読めないのはちょっと寂しいですね・・・一切思考が読めないキャラですごくよかったのに。

犯人についてですが、ちょっと猟奇的すぎたのでノーコメントです笑。



まとめ

申し訳ないんですが、バンコランシリーズ全編通して翻訳が微妙でした。
もしかしたら原文もそんな感じかもしれませんが(カーの初期だし・・・)、物語やミステリーは十分面白かったので新訳が出ないかなと期待しています。
探偵バンコランのキャラは、人間味を感じられてとても好きなキャラでした。
ただ、ワトソン役だったジェフ主体の小説「毒のたわむれ」があるそうで、昔知らずに読んでたのでもう一度読もうと思います。

カー好きの方は一度バンコランシリーズ読んでみてくださいね!

    バンコランシリーズの感想一覧

  1. 夜歩く
  2. 絞首台の謎
  3. 髑髏城
  4. 四つの凶器