「さよならドビュッシー」中山七里の傑作、音楽ミステリ小説

「さよならドビュッシー」中山七里の傑作、音楽ミステリ小説

「さよならドビュッシー」とは

「さよならドビュッシー」とは、著者の中山 七里(なかやま しちり)さんの青春ミステリー小説です。

青春ミステリーと書きましたが、ミステリー初心者でも楽しく読める作品となっています。むしろ初めての方が一番楽しめると言っても過言ではありません。

実は、第8回「このミステリーがすごい!」で大賞を受賞した作品でもあります。

ちなみに過去に大賞を受賞した作品は、「チームバチスタの栄光」や「禁断のパンダ」などと言った有名作品があります。(個人的にハズレがないと思ってます。)

今回は、「さよならドビュッシー」をご紹介します。

※この作品は別名「岬洋介シリーズ」とも呼ばれます。

「さよならドビュッシー」のあらすじ

あらすじ

祖父と従姉妹とともに火事に遭い、全身大火傷の大怪我を負いながらも、ピアニストになることを誓う遥。

コンクール優勝を目指して猛レッスンに励むが、不吉な出来事が月次と起こり、ついに殺人事件まで発生する…。

主人公が全身大火傷を負う

今作の主人公は、香月 遥(こうづき はるか)というピアニスト志望の女子高校生です。

片桐ルシアという同じくピアニスト志望の同い年の従姉妹と、一緒に暮していました。

しかしある日、祖父と遥、ルシアがいた離れが火事になってしまいます。

始まってすぐに主人公が悲惨な目に遭うので、可哀想に思えますが、この

後からが主人公にとっての本当の試練が始まります。

祖父から約6億円の遺産を受け継ぐ

火事から生き残ったのは遥だけで、祖父とルシアは亡くなってしまいました。祖父が亡くなったことで遺言書を確認することになったのですが、その内容は家族全員が驚くものでした。

なんと総資産約12億円の半分を遥に譲り渡す、というものです。ただし、音楽のためだけに使用するという条件付きで。

生き残った遥は、全身に大火傷を負いながらも必死でリハビリをして復帰をし、ピアノコンクールに挑戦をします。

リハビリを初めて少しずつ感覚が戻ってきたは良いものの、今度は命の危険を感じるような出来事が多々起こるようになりました。

果たして遥は生き残って、ピアノコンクールで優勝することができるのでしょうか?

ちなみに、この時遥の指導を受け持ってくれた人物、岬 洋介(みさき ようすけ)がこの作品における探偵役になります。

「さよならドビュッシー」の面白さ

主人公の並々ならぬ努力

全身大火傷を負った主人公の遥は、皮膚移植をしたため全身が思い通りに上手く動かせない状態が続きます。

特にピアノに必要な指の感覚や柔軟性を取り戻すのに、必死にリハビリをしていました。

精神的にも身体的にも地面を這いつくばりながらも、必死でピアノを弾こうとする彼女の努力が一番の見どころです。

読んでてとても苦しくなったのを覚えています。音楽って一種のスポーツなんですよね…

ミステリーとして最高の展開

音楽の描写もとても繊細でお上手なんですが、なんといってもミステリー小説としての構成がお上手です。

音楽を絡めた物語って、どうしても興味ない人には読みにくくなってしまうと思います。

ですがそのギリギリのところを調整して、読者が退屈しないように物語が急展開を迎えるところを上手く配置し、ぐいぐいと読ませてくる作品です。

最後はきっと驚くこと間違いありません!

「さよならドビュッシー」の続編(未完)

「さよならドビュッシー」には続編があります。

別名「岬洋介シリーズ」とも言われておりまして、ピアニストの岬を探偵としたシリーズを展開しています。

一巻ずつ完結していますが、順番に読むと、岬さんの生い立ちみたいが深く知れると思います。

No.タイトル出版年数
1さよならドビュッシー2010
スピンオフさよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)2010
2おやすみラフマニノフ2010
3いつまでもショパン2013
4どこかでベートーヴェン2016
5もういちどベートーヴェン2019
6合唱 岬洋介の帰還2020

さよならドビュッシーのスピンオフ

あらすじ

『さよならドビュッシー』の玄太郎おじいちゃんが主人公になって大活躍!

脳梗塞で倒れ、「要介護」認定を受けたあとも車椅子で精力的に会社を切り盛りする玄太郎。

ある日、彼の手掛けた物件から、死体が発見される。完全密室での殺人。

警察が頼りにならないと感じた玄太郎は、介護者のみち子を巻き込んで犯人探しに乗り出す…

「要介護探偵の冒険」など、5つの難事件に挑む連作短編ミステリー。

なんと、1巻で亡くなってしまった遥の祖父、玄太郎が活躍するスピンオフです。

最初発見した時は非常に驚きました。こんなスピンオフがあるんだ…と。

もちろん時間軸は、1巻の前の話になります。事件を振り返るとちょっと切ないですが、これはこれで面白い作品です。

2巻 おやすみラフマニノフ

あらすじ

第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに秋の演奏会を控え、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。

しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり…。

ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実!美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。

今回は、オーケストラで使用するはずだった、チェロのストラディバリウスが保管室から盗まれる事件が起こります。警備員がいたのにも関わらず。

まさかの事態に大学中は混乱になるんですが、今度は保管室のピアノも破壊され、大学に殺人予告がされるなど不可解な事件が起こります。

演奏会が間近に控えたオーケストラに何者かが危害を加えている、そんな状況下で岬はどう推理するのでしょうか?

個人的に前作よりも好きな作品です。理由はラフマニノフが好きなんですが、いろんな曲がたくさん登場するからです。登場する度にBGMとして流していました。

ミステリ好きやラフマニノフ好きにも堪らない作品となっています。

3巻 いつまでもショパン

あらすじ

ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。

しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。

さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称“ピアニスト”がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!

今回の舞台はポーランドのショパン・コンクールです。

岬の視点ではなく、コンクール出場者のヤン・ステファン視点で物語は進みます。

この時のポーランドではテロが多発しており、中々物騒な状況下に陥っていました。逗留していた岬の周辺でも犠牲者が数々出て、悲惨さが非常に伝わってきます。

この巻の見どころは、最後、ピアノコンクールで演奏者たちが様々な演奏をするシーンです。

特に岬さんの生き方、信念が感じられる作品です。

恩田陸の「蜜蜂と遠雷」もピアノコンクールを舞台とした作品ですが、そちらとはまた違った心地良さを感じられる描写で、ぜひ読んでいただきたいです。

4巻 どこかでベートーヴェン

あらすじ

加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。

しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。

憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに“最初の事件”に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が…。

相変わらず、読ませる力がすごいシリーズですが、この巻は辛いです。

岬さんの子供の頃を描いた作品です。過去編です。

岬さんはどういう過去を経て、現在のピアニストに落ち着いたのか。彼がより深く知れる作品です。

読み終わった後、ベートーヴェンが辛い曲に感じました…。

5巻 もういちどベートーヴェン

あらすじ

司法試験をトップで合格した司法修習生・岬洋介。

同じく修習生の天生はひょんなことから彼と親しくなるが、クラシック音楽を避ける岬が実はピアノの天才であると知り、彼の正体に疑問を抱く。

そんな折、二人は修習の一環でとある殺人事件の取り調べに立ち会う。

凶器から検出された指紋は被害者の妻のもののみで、犯人は彼女しかいないと思われた。しかし岬は無罪の可能性を主張し…。

前巻から続いて、岬さんの過去編です。

司法試験をトップで合格した、とか人間じゃない感がかなり出ていますが、まあ岬さんだからあり得るでしょうということで…(司法試験ってかなりの難関ですよね)

実は岬さんの父はエリート検事らしく、だからか…と思わなくもないですが、ピアノもできて頭も切れるなんて、周りから妬みが多くなりそうな要素満載ですね。

今回は音楽が舞台ではないので、他よりも音楽の話は少ないミステリ小説になっています。

6巻 合唱 岬洋介の帰還

あらすじ

幼稚園で幼児らを惨殺した直後、自らに覚醒剤を注射した“平成最悪の凶悪犯”仙街不比等。

彼の担当検事になった天生は、刑法第39条によって仙街に無罪判決が下ることを恐れ、検事調べで仙街の殺意が立証できないかと苦慮する。

しかし、取り調べ中に突如意識を失ってしまい、目を覚ましたとき、目の前には仙街の銃殺死体があった。

指紋や硝煙反応が検出され、身に覚えのない殺害容疑で逮捕されてしまう天生。そんな彼を救うため、あの男が帰還する―!!

岬さんが帰ってくる巻です!ようやく過去編を経て、再び現実へと物語は進んでいきます。

今回は、親友である検事の天生がピンチに陥るところで岬さんが登場し、岬の父と対決をします。前々から仲が悪いのは感じていましたが、ようやく決着がつきます。

タイトルに「合唱」と書いてあるとおり、著者の中山さんの他シリーズの登場人物がほとんど登場します。

残念ながら私は他のシリーズは未読でしたので、他のシリーズを読んでる方は興奮するに違いない良作です。

まとめ

「さよならドビュッシー」から始まって、その続編はどんどん音楽の話が濃くなってきます。

音楽を知らない方でもなんとなく読めてしまうのは、この小説の良いところです。

わたし的には、ミステリというよりスポ根色が強い小説だなあと思っています。

ミステリに留まらず、人間の良さを繰り返し教えてくれる小説でもあります。

この機会にぜひご一読ください!