テスカトリポカ(佐藤究)のあらすじと感想。生きたまま心臓をえぐる凄惨な祝宴

テスカトリポカ(佐藤究)のあらすじと感想。生きたまま心臓をえぐる凄惨な祝宴

2021年直木賞受賞「テスカトリポカ」佐藤究

この作品はクライムノベルと言われる犯罪小説で、麻薬や臓器売買をテーマとしています。

残酷な描写などがありますが、物語の展開も上手くて、思わずのめり込んで読んでしまう作品です。

今回は著者の佐藤究さんの「テスカトリポカ」についてご紹介します。

※残虐な殺人行為などの描写が含まれますので、苦手な方はご注意ください。苦手でない方はぜひ読まれることをおすすめします。

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「テスカトリポカ」あらすじと内容

あらすじ

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。

二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。

海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。

大雑把に説明すると、17歳少年・コシモが麻薬カルテルのトップ・バルミロと日本で出会い、闇ビジネスとテスカポリトカという神様を「知る」話です。

物語のはじまりは、コシモくんのお母さん・ルシア視点から始まります。 彼女がどういう経緯で日本に来てコシモを育てたのかが語られており、コシモがどういう状況下に置かれていたのかが描かれています。

その後、メキシコにいる麻薬カルテルのトップであるバルミロの視点に切り替わります。
バルミロがどういう経緯で麻薬カルテルに関わることになり、日本へやってきたかが彼視点で語られています。

そして時を経て、バルミロが臓器売買ビジネスのため日本へ訪れ、闇ビジネスの仲間を集めている時にコシモと出会います。

登場人物の視点がどんどん変わる

「テスカトリポカ」の特徴として、登場人物がみんな主人公のようにいろんな登場人物の視点に次々と切り替わります。
この切り替えがとても自然で、違和感なくスルスルと読めてしまう構成です。

実は作品の半分までが主要人物たちの背景説明で、半分から最後までがメインの日本での臓器売買ビジネスの話になります。

読んでいた時に、「こんなにページを割くほど説明したかったのか…?」と思ったのですが、たしかに登場人物たちの背景を読んでいると説得力が全然違ってきます。読み応えがめちゃくちゃある。

そして最大のテーマである、臓器売買の話とアステカ神話を上手く融合させており「あぁ、なるほどな」と納得する作りになっています。

この作品を書いた著者さんは、かなり物語の設定や構成を考えて作ったんだろうな、と素人でも感じられるほどの作品です。

※ここから先はネタバレを含みます。まだ読んでない方はご注意ください。

「テスカトリポカ」を読んだ感想・個人的評価

この作品は、非常に面白く興味深かった作品でした。

良かった理由は3つあります。
①物語としてかなり面白い
②臓器売買と神話を絡めても、違和感がまるでない
③キャラクターのバランスがとても良い

読んでる時は没入感が深くて、読み終わった後しばらくぼーっとしていました。

久しぶりに読むのに夢中になった小説でしたし、最後はなんともすっきりとした後味だったので拍子抜けしてしまいました。
なによりコシモと末永が、とても印象的で良いキャラクターでした。

以下からは気になった点を書いていきます。

コシモ(小霜)について

この作品の中で一番癒やされるキャラクターであり、読者から愛される存在だと思います。
主要人物はコシモ以外全員真っ黒な闇を持つ人間ばかりで、彼だけが純真無垢なキャラクターでした。

私はずっとハラハラしながら最後まで読んでいたんですが、終盤のバルミロとの対決が非常にドキドキしました。

矢鈴がラリって、車の方向転換した時は「おいー!!!」と叫んだほどです。

対決後も後日談的な話で登場していますが、彼は結局救われていないと想像しています。

パブロの娘に上げたペンダントについて

ここからは私の仮説です。間違ってるかもしれませんが、個人的に気になった部分です。

最後にコシモはパブロの娘に札束(300万以上?)、黒石・翡翠・エメラルドで出来た木彫りのペンダントあげていました。
裏側にはコシモとパブロの名前が刻まれています。

その後アステカ神話の話に戻り、テスカトリポカの怒りを抑えた英雄テスカコアトルに仮面と、翡翠の首飾りをつけて〜という話がありました。

その部分から恐らくコシモは、バルミロから刷り込まれたアルテカ神話をいまだ信じていて、ペンダントに刻み込まれる二人の名前から「自分たちは英雄テスカコアトルだ」と考えていること表しているのではないのでしょうか。

でなければ最後に、アステカ神話の英雄テスカコアトルの話を持ってこないだろうなと。

そうなると、やはりコシモはアステカ神話をまだ信仰しており、この後も信仰にもとづいた行動をするのではないかなと想像します。(=バルミロと同じ道)
テスカトリポカの正体である、皆既月食だと気づいたとしても。

色々考えると辛い展開です。罪を犯しても純粋な部分があった彼が、そういう運命に変えられてしまったことが非常に辛いなと想像します。

末永の語りと「太文字」

この作品には頻繁に「太文字」を使って強調すべきところを強調しています。

使い方が非常にお上手でして、場面場面で読者に対して注目を集めるのと、少し作中の時間が止まったような印象を受けました。

また、太文字は全て「登場人物の想い」もしくは「強調したい事柄」の箇所に使われています。

心臓売買ビジネスの話

特に印象的だったのが、P.219の末永の語りです。この部分には全て太文字が使われています。

心臓売買ビジネスの話をしている場面なんですが、「商品の質」と「顧客満足度」の2点について話をしています。

一つ目は、心臓移植をすると稀に「バイオセンチメンタリー(生物学的感傷)」というメカニズムが起こると。
心臓移植は誰かの生命を犠牲にしているため、患者にとっては相手のことを考えてしまうため、精神的に落ち込む現象が起こる、と末永は言います。

これまた現実にはない言葉なので恐らく作り話なんですが、非常にリアルに迫っていました。(事象としては存在する・・・?)

そしてこれの対応策として、子供(=商品)が最後まで幸せに暮らしていたことを証明させるため、日記を書かせることを行いました。

二つ目は商品の質についてですが、どうやら世界中で環境汚染が酷いため商品の質が悪くなるそうです。
しかし、日本では比較的空気が綺麗なためどこよりも商品の質が良い、ということに気づいた末永は、日本で商売を始めることにします。

上記の部分を読んだ時は思わず感心してしまいました…!こんなこと思いつく著者はすごいです。まさに顧客のインサイトをきちんと突いてるビジネスだなあと説得させられてしまったほどに。
非常識云々は一旦置いておいて、「末永」という人物の頭のキレに驚いたので、やはり後になにかやるだろうな〜と思ったら案の定、終盤では物語が急展開を迎えていました。

この作品の中で特に面白かったのはココでした。すごかったな・・・

まとめ

他にも色々語りたい部分はありますが、長くなるのでここらで止めておきます。

結局、こうした騒動の全ての原因はバルミロの祖母(リベルタ)が、バルミロ4兄弟にアステカ神話について刷り込ませたことがきっかけです。

最後はおばあちゃんの語りで終わるというなんとも皮肉な場面ですが、総合的にはよくできた物語でした。

しかしバルミロとコシモの対決の場面はすごかったな…。あの時、バルミロはコシモ(=テスカトリポカ)を視たんでしょうが、一人だけ気持ちよくなっちゃってまーと思わなくもなかったです。

どこまでも信仰に振り回された悲しい人間です。何かを信仰するというのは何かを犠牲にすることなのかもしれませんね。

著者の佐藤究さんについては、他の小説「QJKJQ」も読みましたが、今回の作品のほうが好みでした。

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